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「並外れたレースクラフト」F1ルーキー・角田裕毅が“大きな武器”を身に着けた「登竜門」での1年を恩師が回想

THE DIGEST編集部

2021.01.15

オーナーのカーリンは、角田(写真)のタイヤマネジメント能力を高く評価した。(C)Getty Images

 今季、アルファタウリからF1デビューする角田裕毅。2016年のフォーミュラレース参戦から、5年で最高峰の舞台に辿り着いた彼は、F2をわずか1年経験しただけである。

 F1への登竜門であるこのカテゴリーでの1年は、しかし彼に大きな武器を授ける重要な時期となったようだ。FIAの公式サイトで、この若き日本人ドライバーがF2時代に所属したカーリン・モータースポーツのオーナー、トレバー・カーリンが、実り多き昨季を振り返っている。

 角田はインド人のユアン・ダルバラをチームメイトに、昨季のF2に参戦。3勝(ダルバラハ1勝)、ポールポジション4回(0回)、ファステストラップ2回(1回)、表彰台7回(2回)という成績でランキング3位となり、チームを総合3位に引き上げた。

 最後の3レースで、他のチームを30ポイントも上回る123点を挙げるなど、時間とともに成長を遂げたことが証明されたチームにおいて、ドライバー、マシン、エンジニアとメカニックの働きというパッケージは最高だったと、カーリンは自負している。

「我々はドライバーに、レースでタイヤをもたせる能力を向上させることに成功した。特にユウキ(角田)のレースクラフトは並外れていた。エンジニアはペースを落とすことなくタイヤを制御する方法を考え出し、それを彼に教えることに力を注いだ。それは我々にとっての、最大の強みだった」
 
「タイヤのグリップを保ちながらも速かったため、レースの終盤で他の車がタイヤを使い果たした際、我々はとりわけ強さを発揮できた。我々はスピードも素晴らしかったが、タイヤマネジメントについては、まさにエクセレントだった」

 カーリンは、序盤で多くのポイントを落としていたことで、チームよりも、角田のポイントを上げることに集中。最後のスプリントレースの末にチームは3位の好結果を得たものの、角田が年間王者に輝いたミック・シューマッハーとわずか15ポイント差だったことに、嬉しさよりも悔しさと後悔の念を抱いたという。

 角田は昨年11月、イモラでのF1テストで持ち前のスピードを示すだけでなく、タイヤに優しい走りを見せ、さらにエンジニアへのフィードバックの能力の高さも示してレッドブル首脳陣を驚かせたが、これらの多くはカーリンの下で培ったものだと言えよう。

 一発の速さだけでなく、レースに勝つための術を身につけてF1に挑戦する20歳。3月12日~14日に行なわれるテストを経て、同月28日のバーレーンGPで幕を開けるデビューシーズンに臨む角田は、その武器をフルに発揮して並みのルーキーではないことを示せるだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

【動画】イモラでの角田裕毅のテスト走行のとインタビューの様子