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「やります、あと半年で」世界との差を縮めるために、女子ホッケー永井友理が取り組むチームの進化

内田暁

2021.01.23

ソニーの永井は敗戦とともに、新しいものを取り入れることの難しさを知った。しかしその思いに迷いはない。写真:内田暁

ソニーの永井は敗戦とともに、新しいものを取り入れることの難しさを知った。しかしその思いに迷いはない。写真:内田暁

 12月末の寒空の下、彼女は全国高校選抜大会の補助員として、来賓の受け付けや戦評書きに忙しく身体を動かしていた。

 時折、その姿を目にした高校生に写真を求められもするが、「ここでの私は裏方だから」と、目立つことは好まなかった。今この瞬間のために全力で戦う高校生を見ると、「純粋に感動したし、初心に戻させられた」と言う。

 永井友理。

 日本代表のエースであり、所属チームのソニーHCブラビアではキャプテンを務める彼女は、数週間前に負った敗戦の傷を抱えたまま、高校生が駆けるフィールドに視線を向けていた。

 永井が牽引するソニーは、日本国内で“常勝”を誇る強豪である。昨年を迎えた時点で、日本リーグ5連覇中。全日本選手権では7連覇中という、連勝街道の最中にいた。だが勝つことの常態化は、ともすると停滞へと陥りかねない。事実、チームが抱える微かなほころびや弱点が、勝利によって糊塗される危うさに、永井はある頃から自覚的だった。
 
 だからこそ昨年1月、キャプテンに指名されたのを機に、彼女はソニーの戦術を「変える」……もっというなら、進化させることを志す。自らチームメイトに提案し、話し合った上で監督に意向を伝えたのは、キャプテン就任間もない頃だった。

 すでに確立したものを変えることは、多大なリスクを伴う。ましてやソニーは、それまでのやり方で勝ち続けてきた最強チームだ。ただ永井は「監督の方が、変える怖さがあったのでは」と父親でもある指揮官の心境を慮った上で、「でも選手としては、やりたいと思った」と明言する。その理由は複数あるが、源泉にある究極のモチベーションは、「日本のホッケー界を牽引していくチームでありたい」という高邁な理念だ。

「今までのソニーの勝つだけの戦術では、日本のホッケー界を牽引し、見ている人……特に、子どもたちが憧れる存在にはなれないと思ったんです。それに、世界との差を縮めようと思った時にも、ライバルたちに『敵わない』と思われるチームにならなくてはダメではと思いました。自分たちならできるという気持ちもあったので、それがモチベーションです」
 

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