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【中山記念】超ハイペースな激戦を制したヒシイグアスは、大阪杯でも侮れない存在に

三好達彦

2021.03.01

ヒシイグアスの1分44秒9という走破タイムは、2004年の本レースでサクラプレジデントが叩きだしたコースレコードとタイ記録となった。写真:産経新聞社

 2月28日(日)、大阪杯(GⅠ、阪神・芝2000m)への重要なステップレースである中山記念(GⅡ、中山・芝1800m)が行なわれ、単勝1番人気に推されたヒシイグアス(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)が激戦を制して4連勝を達成。大阪杯への優先出走権を獲得した。2着には京都金杯(GⅢ、中京・芝1600m)を勝利して臨んだケイデンスコール(牡5歳/栗東・安田隆行厩舎)が差し込み、積極的なレース運びをしたウインイクシード(牡7歳/美浦・鈴木伸尋厩舎)が粘って3着に健闘。東西金杯の優勝馬と、中山金杯3着馬での決着となった。

 1000mの通過ラップが57秒8という超ハイペースで進むなか、ウインイクシードは2番手、ヒシイグアスが4番手、ケイデンスコールがその直後にポジションを取り、このレースが現役最終騎乗となる蛯名正義騎手が手綱をとるゴーフォザサミット(牡6歳/美浦・藤沢和雄厩舎)は中団を追走した。1600mの通過が1分32秒8と、なおも速いペースでレースは流れて直線へ。ウインイクシードが仕掛けて先頭に躍り出るが、外からヒシイグアス、内ラチ沿いからケイデンスコールが急追。ゴール前は3頭によるシビアな競り合いとなったが、最後にグイッとひと伸びしたヒシイグアスがクビ差でケイデンスコールを下した。蛯名正義騎乗のゴーフォザサミットは、上位3頭とはやや離れた4着で終えている。なお1分44秒9という走破タイムは、2004年の本レースでサクラプレジデントが叩きだしたコースレコードとタイ記録となった。

 晩成の活躍馬を多く輩出しているハーツクライの仔らしい、ヒシイグアスの充実ぶりが目立つレースだった。
 
 一昨年の夏、不良馬場となったラジオNIKKEI賞(GⅢ、福島・芝1800m)で9着に大敗したあとは、成長を促すために長期休養に充てた陣営の判断が奏功。復帰後は2戦連続2着とし、さらに2勝クラス、3勝クラスの特別戦を連勝し、前走の中山金杯(GⅢ、中山・芝2000m)で、5歳にして重賞初制覇に結びつけた。これは、敏腕トレーナーとして鳴らす堀調教師の真骨頂と言えるもの。そして、中山記念でも重賞のレース経験豊かなライバルたちを相手に、厳しい流れを積極的な追走から差し切るのだから素晴らしい。おそらく出走するであろう大阪杯でも一躍、侮れない存在になった。

 1600m以上の距離で良績がなかったことから距離延長が不適とみて、プレビュー記事を書く際に軽視したケイデンスコールが2着に食い込んだ。これは"イン突き"を得意とする岩田康誠騎手の、距離のロスを避ける好騎乗に負うところが大きかったように思う。これからの進路は分からないが、今回よりもさらに距離が200m延びる大阪杯への適性については、はやり疑問が残る。

 ウインイクシードは横山武史騎手が最高の騎乗を見せての3着であり、この馬らしい先行力を生かし切っての結果。これ以上の走りを求めるのは難しいだろうが、速い時計に対応できたのは収穫だったのではないか。

 3番人気に推されたハビット(牡4歳/栗東・浜田多実雄厩舎)は、逃げバテて最下位の14着に敗れた。自らが作り出した超ハイペースが堪えたのは確かだが、3コーナーから失速したレースぶりを見ると、気性を含めての調子自体にも敗因があるように感じた。

文●三好達彦

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