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ラグビー

「僕たちのためだけじゃない!」死闘を制した日本代表が台風被災者へ込めた熱き想い【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.14

スコットランド戦でも身を削って果敢に敵陣に踏み込んだリーチ主将。試合後、台風被災者への熱い想いを明かした。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

スコットランド戦でも身を削って果敢に敵陣に踏み込んだリーチ主将。試合後、台風被災者への熱い想いを明かした。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

[ラグビーW杯]日本28-21スコットランド/10月13日/横浜国際総合競技場

 鮮やかな勝利を、ベスト8進出の偉業を捧げる──。ラグビー日本代表は不退転の決意で、運命のスコットランド戦に臨んだ。

 日曜日に行なわれたラグビー・ワールドカップのプールA最終戦、引き分けか勝利かで悲願の決勝トーナメント進出が決まるブレイブ・ブロッサムズは、天敵スコットランドから4トライを挙げる暴れっぷりで、見事28対21で凱歌を上げた。満員札止めのスタジアムで歓喜の雄叫びを上げ、日本全土を熱狂の渦に巻いたのである。

 前日の夜から朝方にかけて、史上最大級の台風19号が日本の各地を襲い、甚大な被害を与えた。大会事務局は午前中に日本対スコットランド戦の開催を決断したが、舞台裏ではピッチや会場の整備に数え切れない人びとの尽力があり、なんとかギリギリで間に合わせたというのが本当のところだ。スコットランド戦を戦った日本代表の面々も、それぞれが秘めたる思いを胸に、大一番に挑んでいた。

 試合後の会見でジェイミー・ジョセフHCは「まずはひと言話させていただきたい」と切り出し、「今回の台風によって甚大な被害がもたらされた。19名の方が亡くなり、12名の方が行方不明だと聞き、私たちはチームとしてそのことについて話したのです。スコットランド相手にタフな時間帯を強いられても、最後まで諦めない心を持って、正念場でやり切ることができた。本当に悲しい出来事だが、いまはただ、私たちの勝利を届けたい」と語った。

 続けてリーチ・マイケル主将も熱い想いを吐露。「試合の前にチームホテルでジェイミーがその話をして、選手たちももちろん知っていた。この試合は僕たちだけのための試合ではない、台風の被害に遭って犠牲になったり苦しんでいる人びともためのものでもあると。そしてこの試合を実現させるために、床をスポンジで拭いたり、水を履いたり、たくさんの努力があったことも分かっていました。日本を代表してこのときに試合ができたことに感謝している。こういう試合が役に立つ、という気持ちがあったから」。

 
 2トライで殊勲のWTB福岡堅樹は「少しでも日本の力になるようなプレーができたらと、みんなで話してた」と振り返り、HO堀江翔太は「チームとして勇気をもらえる、元気をもらえる試合をやらなアカン。台風のなかで、そういう部分を観てくれたかなと思います」と語気を強めた。FLピーター・ラブスフカニは「突然愛する家族や友人と会えなくなる辛さ……。想像を絶するものがあるし、心が痛む。この勝利が少しでも元気づけるなにかになったのなら、本当に嬉しいことです」と話してくれた。

 試合を重ねるごとに、勝利を飾るごとに、日本中のボルテージを高めている日の丸戦士たち。準々決勝の南アフリカ戦(10月20日/東京スタジアム)でも臆することなく信念を貫き、快勝劇を披露してくれるはずだ。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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