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ラグビー

「慣れてないんで置き方が…」笑わない男・稲垣啓太が“日本代表初トライ”にニガ笑い!?【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.14

世界中をあっと驚かせた前半26分のビッグトライ。稲垣にとってはこれが代表チームでの初トライとなった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

世界中をあっと驚かせた前半26分のビッグトライ。稲垣にとってはこれが代表チームでの初トライとなった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

[ラグビーW杯]日本28-21スコットランド/10月13日/横浜国際総合競技場

 滅多に感情を表に出さないプロップが、華麗なるビッグトライの最後を締めくくった。

 10月13日、横浜国際総合競技場で行なわれたラグビーワールドカップのプールA最終節、日本代表は天敵スコットランドと対峙し、見事28対21で競り勝った。いずれも絶品の4つのトライを挙げて日本中のファンを熱狂させ、初めてベスト8への道を切り開いたのだ。

 とりわけ圧巻だったのは、前半26分に生まれたチーム2本目のトライだろう。SO田村優のパスを受けたHO堀江翔太からLOジェームス・ムーア、FBウィリアム・トウポウと3本のオフロードパスを繋ぎ、最後は稲垣啓太が豪快にトライをねじ込んだ。スコットランドの鉄壁ディフェンスをど真ん中から切り裂き、あっという間に逆転に成功。試合のキーポイントとなったプレーである。

 意外にもこれが稲垣にとって、代表33キャップ目での初トライとなった。選手本人は「みんなで繋いでくれて、トライをするのってこんな気分なんだなと。一番いい舞台で一番いいトライをさせてもらいました」と淡々と振り返り、こう続けた。

「代表に入ってから7年間で初めて(トライを)しましたけど、慣れてないんで置き方が両手で行きました。トライに至るまでのプロセスが素晴らしかったと思います。非常にうまくボールを繋いで、最終的に僕のところに繋いでくれたってだけで、日本が理想とするトライの取り方だったんじゃないでしょうか」

 ゲームプランを堅実に遂行しながら、刻々と変わる戦況にもチームとしてうまく対応できたと明かす。

「最初の20分、僕たちとしてはボールのポゼッションを上げていこうと。とはいっても相手ももちろん最初の20分は思い切り仕掛けてくるだろうから、非常にタフな戦いになる、前半はタフになるとは覚悟していました。後半から僕たちのテンポを上げていこうと話をしていて、実際に良い入りをできたんですけど、相手もギアを上げてきて、ボールキープに切り替えてきたところで、トライを重ねられてしまいました。ただ80分間を通して苦しい時間も多かったけど、勝ったことがすべてだと思うので。反省点もたくさんありますが、そこはうまく修正していきたい」
 4年前に果たせなかった悲願を成就させた。だが視線はすでに、ノックアウトラウンドに向けられている。

「前回大会から言っていた、ベスト8っていう目標がクリアできたわけですから、まずは嬉しい。日本ラグビー界にとって新しい歴史を刻んだなって実感がありますけど、これで終わったわけじゃないですし、また新しい挑戦が始まる。次の南アフリカ戦に向けて準備していきたい」

 試合後に撮影したチーム全員での集合写真でもスマイルは登場せず、ミックスゾーンで「笑ったことないですね」と言い切った稲垣。どこまでも自己に厳しい名手が、日本代表をさらなる高みへ導く牽引車となる。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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