［好調のドゥカティ勢を抑えてヤマハが先勝］
プレシーズンテストでの仕上がりの良さが伝えられたドゥカティ、ヤマハ両陣営のライダーが優勝候補に挙げられていた、2021年のMotoGP・開幕戦カタールGPは、マーベリック・ビニャーレス（モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP）が制した。
レースが開催されたロサイル・インターナショナル・サーキットでのテストで非公式ながらコースレコード、史上最高速度をマークしていたドゥカティ勢は、本番でも絶好調。予選ではフランチェスコ・バニャイア（ドゥカティ・レノボ・チーム）が、1分52秒772のコースレコードでMotoGPクラス初のポールポジションを獲得し、ヨハン・ザルコ（プラマック・レーシング・ドゥカティ）も362.4km/hの史上最高速度を記録した。
一方のヤマハ勢もファビオ・クアルタラロ（モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP）が予選2番手、ビニャーレスも3番手へと滑り込んでフロントロー。ヴァレンティーノ・ロッシ（ペトロナス・ヤマハ・セパン・レーシング・チーム）も4番手と続く。
決勝のスタートでは、圧倒的なストレートスピードを誇り、マシンのフロント、リアにホールショットデバイスを装備するドゥカティ勢が一気に飛び出し、一時は1-2-3-４体制を形成。
ヤマハ・ファクトリーの2人はスタートで出遅れたが、力強い走りでトップグループに追いつくと、15周目にはビニャーレスがバ二ャイアを抜き、首位へと浮上。徐々に後続を引き離し、1.092秒の差で逃げ切った。ビニャーレスにオーバーテイクされた後、順位を落としたクアルタラロは5位でフィニッシュした。
中盤まで1-2体制を築いていたバ二ャイアとザルコは、レースの最終盤、前年王者のジョアン・ミル（チーム・スズキ・エクスター）にかわされたが、最終ラップの最終コーナー立ち上がりで最高速度が約20km/h違うパワーの差を生かして抜き返し、ザルコが2位、バニャイアが3位でゴールした。
［ビニャーレス快勝の陰にいた意外な立役者］
タイヤの耐久性に問題を抱えるYZR-M1の特性もあり、スタートで出遅れて集団に飲み込まれると、じりじり後退していくことが多いビニャーレスにとって、今回の快勝には、何人かの立役者がいたようだ。まずは新たにテストライダーとして加わったカル・クラッチローだ。
「カルと僕とではバイクの乗り方がとても似ているんだ。彼は多くのことを理解するのを手伝ってくれた。マシンのフロント部分をより良くするためにテストでは一緒になって懸命に取り組んだ」と“TOP GUN”は語る。
「カルのようなライダーがいることで、冷静さを保つことができる。彼が何か効果があるといえば、それを信じることができる」とすでに信頼は絶大なようで、「ようやく“ヤマハのDNA”を取り戻すことができた。次のテストが待ち遠しいよ！」との言葉も聞かれた。
もうひとりは新妻のラクエル・スビラさんだろう。
「家族とヤマハのサポートに感謝している。僕には素晴らしい妻がいて、もうすぐ母親になる。これ以上は望めないほどだよ。父親であることは決して“0.5秒のロス”にはならない。今年はチャンピオンになれる可能性が高い年だと思っているし、現在起こっている全てのことに感謝の気持ちでいっぱいなんだ」
メンタルの状態が走りに影響を及ぼしやすいライダーだけに、周囲に心の安定をもたらしてくれる存在がいることは大きい。今季、これからも活躍できるかどうかの鍵を握るのは、マシンの出来以上にこの2人なのかもしれない。
文●甘利隆
著者プロフィール／東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter：ama_super
プレシーズンテストでの仕上がりの良さが伝えられたドゥカティ、ヤマハ両陣営のライダーが優勝候補に挙げられていた、2021年のMotoGP・開幕戦カタールGPは、マーベリック・ビニャーレス（モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP）が制した。
レースが開催されたロサイル・インターナショナル・サーキットでのテストで非公式ながらコースレコード、史上最高速度をマークしていたドゥカティ勢は、本番でも絶好調。予選ではフランチェスコ・バニャイア（ドゥカティ・レノボ・チーム）が、1分52秒772のコースレコードでMotoGPクラス初のポールポジションを獲得し、ヨハン・ザルコ（プラマック・レーシング・ドゥカティ）も362.4km/hの史上最高速度を記録した。
一方のヤマハ勢もファビオ・クアルタラロ（モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP）が予選2番手、ビニャーレスも3番手へと滑り込んでフロントロー。ヴァレンティーノ・ロッシ（ペトロナス・ヤマハ・セパン・レーシング・チーム）も4番手と続く。
決勝のスタートでは、圧倒的なストレートスピードを誇り、マシンのフロント、リアにホールショットデバイスを装備するドゥカティ勢が一気に飛び出し、一時は1-2-3-４体制を形成。
ヤマハ・ファクトリーの2人はスタートで出遅れたが、力強い走りでトップグループに追いつくと、15周目にはビニャーレスがバ二ャイアを抜き、首位へと浮上。徐々に後続を引き離し、1.092秒の差で逃げ切った。ビニャーレスにオーバーテイクされた後、順位を落としたクアルタラロは5位でフィニッシュした。
中盤まで1-2体制を築いていたバ二ャイアとザルコは、レースの最終盤、前年王者のジョアン・ミル（チーム・スズキ・エクスター）にかわされたが、最終ラップの最終コーナー立ち上がりで最高速度が約20km/h違うパワーの差を生かして抜き返し、ザルコが2位、バニャイアが3位でゴールした。
［ビニャーレス快勝の陰にいた意外な立役者］
タイヤの耐久性に問題を抱えるYZR-M1の特性もあり、スタートで出遅れて集団に飲み込まれると、じりじり後退していくことが多いビニャーレスにとって、今回の快勝には、何人かの立役者がいたようだ。まずは新たにテストライダーとして加わったカル・クラッチローだ。
「カルと僕とではバイクの乗り方がとても似ているんだ。彼は多くのことを理解するのを手伝ってくれた。マシンのフロント部分をより良くするためにテストでは一緒になって懸命に取り組んだ」と“TOP GUN”は語る。
「カルのようなライダーがいることで、冷静さを保つことができる。彼が何か効果があるといえば、それを信じることができる」とすでに信頼は絶大なようで、「ようやく“ヤマハのDNA”を取り戻すことができた。次のテストが待ち遠しいよ！」との言葉も聞かれた。
もうひとりは新妻のラクエル・スビラさんだろう。
「家族とヤマハのサポートに感謝している。僕には素晴らしい妻がいて、もうすぐ母親になる。これ以上は望めないほどだよ。父親であることは決して“0.5秒のロス”にはならない。今年はチャンピオンになれる可能性が高い年だと思っているし、現在起こっている全てのことに感謝の気持ちでいっぱいなんだ」
メンタルの状態が走りに影響を及ぼしやすいライダーだけに、周囲に心の安定をもたらしてくれる存在がいることは大きい。今季、これからも活躍できるかどうかの鍵を握るのは、マシンの出来以上にこの2人なのかもしれない。
文●甘利隆
著者プロフィール／東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter：ama_super
