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ラグビー

「ものすごい緊張と不安を抱えていた」南アフリカHCはいかにしてジェイミージャパンを封じたのか【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.21

用意周到なゲームプランを完遂し、日本の“フェラーリ”福岡らを封じ込んだ南アフリカ。鉄壁の守備を貫き、快勝を収めた。(C)Getty Images

用意周到なゲームプランを完遂し、日本の“フェラーリ”福岡らを封じ込んだ南アフリカ。鉄壁の守備を貫き、快勝を収めた。(C)Getty Images

[ラグビーW杯]日本3-26南アフリカ/10月20日/東京スタジアム

 これが優勝候補の底力か。南アフリカの壁はやはり高く、分厚かった。

 日本中が熱い視線を注いだラグビーワールドカップ準々決勝、日本対南アフリカ戦。ジェイミージャパンは前半こそ拮抗した展開を見せ、3対5のスコアでハーフタイムを迎えたが、後半になると地力の差を見せつけられる。相手のパワフルなスクラム&モールに押し込まれる場面が頻発し、ミスや反則を繰り返してはペナルティーを献上。3本のPGでリードを広げられると、その後にふたつのトライを許して趨勢が定まった。3対26で敗れ去り、快進撃にピリオドが打たれたのだ。

 試合後、複数の日本の選手が反省したのが、後半立ち上がりの入り方だ。勢いに乗りたいところで意識が空回りしたのかファウルを犯してしまい、開始4分にPGを蹴り込まれ、ずるずると失点を重ねていった。

 努めて冷静だったのがスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)のフィフティーンだった。いったいハーフタイムにロッカールームで、どんなやり取りがあったのか。ラッシー・エラスムスHCはゆったりとした口調ながらも熱っぽく、次のように振り返った。

「正直に話せば、ハーフタイムを終えて我々はとても緊張していた。点差はわずか2点で、ロッカールームもいつになく静かだった。日本はアイルランド、スコットランドととても良い試合をし、すごく勢いがある。応援のパワーも尋常ではない。タフな試合になると覚悟はしていたが、まさにその予想通りになったのだ。日本のプレッシャーは凄まじかったし、粘り強く、高い集中力で我々に向かってきた。前半の苦戦の原因はそこに尽きる」
 それでも46歳の指揮官は、選手たちを信じ切っていた。

「努力が足りなかったわけではないから、厳しい言葉は必要なかった。パスミスやチャンスを逃すといったスキルの部分だったので、そういう場合は、自信を取り戻すような言葉をかけたほうがいい。彼らはシヤ(・コリシ/主将)を中心に仲間同士で話し合っていたよ。17週間も一緒にいるんだ。どんな状況からでも抜け出す方法をチームとして理解している。後半にすべてを注ごう、落ち着かせて戦術を実行させようと切り替えることができた」

 コリシ主将はチームメイトに対して、「お互いを信じよう。モールとスクラムが上手くいっているから、なにも変える必要はないし、プラン通りに仕掛けて、忍耐強く保持しよう」と語りかけたという。そして「ドライビングモールを最大限に活用してトライを狙おうと確認した。結果的にそれでペナルティーが増えて、確実に点を繋がったのが大きかったと思う」と振り返った。

 後半半ば以降、南アフリカはどんどんフォワードを“交換”していく。エラスムスHCのゲームプランはここにあった。「日本のふたりのフェラーリを封じることが先決だった」のだ。日本が誇る両ウイング、福岡堅樹と松島幸太朗である。

「日本はとにかくペースが速く、誰もが素早く動けるチーム。とりわけふたりのフェラーリは脅威で、彼らのペースにいかにマッチしていくかが重要だった。今日の試合、私は6人のフォワードを控えメンバーに入れた。常にフレッシュさを保つために交代させながら、スクラムなどでフィジカルに押し込み、上手くスピードも維持できた。そして、フェラーリのスペースを埋めることにも成功したのだ」

 終わってみれば南アフリカの完勝と形容してもいいゲーム内容だったが、エラスムスHCは会見が終了したあとにふたたびマイクを握り、報道陣にこう語りかけた。

「日本代表は本当に素晴らしい戦いを見せたと思う。Tier1のスコットランドとアイルランドがいるのに、グループを1位で突破したのだから。我々がハーフタイムまでものすごい緊張と不安を抱えていたのは紛れもない事実で、日本ラグビーがあらためて良い状態にあることを実感した。試合が終わると、初めての経験だったが、日本のファンの方々が敬意を示してくれて、本当に嬉しく感じた。日本代表だけでなく、対戦相手をも支えてくれたのだ。選手、メディア、サポーター、ワールドカップ開催に関わるすべての方々に、称賛の言葉を贈りたい」

 粋なコメントを残してくれた理論派指揮官。スプリングボクスはどこまでも強く、どこまでもカッコ良かった。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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