［ラグビーＷ杯］日本３－26南アフリカ／10月20日／東京スタジアム 

　一躍、時のひととなった韋駄天は、笑顔で“15人制ジャパン”に別れを告げた。

　日曜日に行なわれたラグビーワールドカップ準々決勝、日本対南アフリカの一戦。前半を終えて３対５と互角に近い試合展開を見せていたジェイミージャパンだが、後半になるとミスやファウルが増え、じわじわと点差を広げられていく。南アフリカのパワフルでスピーディーな守備を前に突破口を見出せず、後半は得点ゼロ。３対26で黒星を喫し、初のベスト４進出は果たせなかった。

　今大会の日本代表でＭＶＰ級の働きを示し、記録にも記憶にも残る４トライをマークしたのがWTB福岡堅樹だ。医師への道に進むため、2020年シーズンいっぱいでの現役引退を表明しており、15人制の日本代表での活動はワールドカップが最後。今後は７人制の日本代表に活動の軸足を置き、来夏の東京五輪出場を目ざす。

　ノーサイドの瞬間、東京スタジアムのピッチに突っ伏した。「ああ、終わったなーって。寂しくなる気持ちとか、なにか漠然とした感覚でした」と振り返る。やがて多くの仲間が涙に暮れるなか、福岡はとびきりの笑顔を振りまきながら、場内を一周した。

「僕自身、日本代表の15人制では最後の大会でした。ひとつの集大成として、自分の人生のなかでも最高の大会になったんじゃないかと思います。ここまで頑張れたのは、やっぱりここが最後だったから。後悔はありません。ここまでやるって決めていたからこそ、きつい練習でも踏ん張れましたし、怪我からの復帰も前向きに取り組めて、努力できた」 　試合後の円陣で、リーチ・マイケル主将はチームメイトに「下を向かず、胸を張ろう」と呼びかけた。福岡も同じ思いを抱いていたという。

「本当にその通りだと思う。目標のベスト8を達成できたのはすごく嬉しいことですし、台風の被害もあって、日本がより勇気を必要としているときにひとつの結果を残すことができたのは、自分たちとしても胸を張っていい結果なんじゃないかと思います」

　優勝候補・南アフリカの底力はやはり尋常ではなかった。福岡は前半に一度、鋭い突破を仕掛けてトライ目前に迫ったが、敵のハードディフェンスに阻まれ、結局無得点に終わる。ゲームをどう総括するのか。

「今日の試合、僕たちとしては出し切ったと思いますし、南アフリカがそれを上回る素晴らしい試合をしていた。ここから上に行くチームとの差の部分、埋められない部分は多少あるのが事実かなと思います。南アフリカのディフェンスの厚さというものをより感じましたし、自分たちは個々の力ですべてを取り切ることがまだまだできていない。自分もひとついいチャンスがありましたが、スコアに繋げられなかったので、まだまだ足りないところなのかなと思います。なにより、やりたいことをさせてもらえなかった。本気で自分たちを潰しにきてるのが伝わってきました」