バスケを引退した夏、彼女は競輪に出合った。自転車にまたがり、漕いでみると、一瞬で、グーンと進む。その感覚に魅せられて、進路が決まった。競輪選手養成所の試験に、2度目の挑戦で見事に合格。入所してから1カ月半、19歳の彼女はゆっくりと、だが確実に成長しているようだ。
<きっかけは母の一言から>
――スポーツ歴を教えてください。ずっとバスケットボールですか。
「バスケを本格的にやり始めたのは小学校5年生から。それまでは水泳や空手、少しサッカーもやりました。身体を動かすのが好きだったんです」
――バスケ部のレベルは?
「中学は初心者ばかりの無名校です。高校は県大会へは行くけど東海大会の一歩手前で負けるという感じでした。その中で私はBチームでした」
――部活ライフは充実していた?
「夢中というほどではなかったですが、バスケが好きだったので、練習は苦ではなかったです。ただ、部員数が多いこともあって、あまり動けませんでした。もう少し汗をかきたかったかな」
――引退してすぐに競輪選手の道に?
「就職するか、進学するかで迷っていた高3の夏に、母がガールズキャンプに参加したらと誘ってくれたんです。進路も決まっていなかったですし、身体も動かしたかったので、ちょっとやってみようかな、くらいの軽い気持ちで参加したのがきっかけですね」
――そこで競輪をやってみたいと?
「はい。その3泊4日のキャンプが、とても楽しくて、競輪に対してよいイメージしかわ
かなかったんです。相部屋の人たちとも仲良くなれて、競輪の世界にも触れられて、充実していました。すぐに受験を決めました。その年は2次試験で失敗してしまったのですが、1年後にもう一度チャレンジして合格できました」
――その1年はどんな風に過ごしていのですか?
「豊橋競輪場が実施しているガールズケイリン育成プロジェクト(T-GUP)に参加することができたので、そこでコーチングを受けながら、適性試験に向けてトレーニングをしていました。バイトもしていましたよ」
――自転車は怖くはなかったですか?
「たしかに最初は怖かったかも。でもそのスリルが楽しくて。普通の自転車と違ってちょっと漕ぐとグーンと進む、その感じが気持ちよかったです」
――実際に競輪場でレースを見たのはいつですか?
「最初の試験を前に父と一緒に。近くで見ると、本当に躍動感や迫力がすごかったです。走っている選手の懸命な姿もかっこよくて憧れました。自分もここで走りたいと思いました」
――ご両親は、賛成してくれた?
「父は自分でもギャンブルを楽しんでいましたし、むしろそっちの道に行ってほしいと思っていたはず(笑)」
――養成所に入ってみて、その生活ぶりはどうですか?
「もっと厳しそうなイメージがあったのですが、自分は大丈夫そうです。先生方も相談しやすいですし、怒られても『すいません!』と大きな声で返事するのは、慣れているので(笑)」
――では実技の面ではどうですか?
「心配はそこです。バスケは良いプレーがひとつでも出ると自信につながります。周りも盛り上げてくれますし、自分もノッてくる感じがありました。チーム競技だったのでごまかしも効いたかもしれません。ただ、個人競技の競輪の場合は自分の実力がすべてタイムで出てしまうんです。そのことにいまだに慣れず、なかなかモチベーションが上がらないんです」
――目標が明確だからこそ、モチベーションが上がりそうですが?
「毎日の練習でもタイムを測っているのですが、自分でも乗れていたな、と感じても、実際のタイムを聞くとそうでもなくて……。自信や満足感が得られず、もどかしさを感じてしまいます。先生にはこの時期のタイムは気にしなくていいよって言われますが、聞かされれば、気になりますよね?」
――周囲のレベルは高いですし、甘くない世界だと感じているのでは?
「養成所に入ってみて改めて感じますね。全国各地から競技経験も、年齢もさまざまな方が集まり、それぞれ挫折を経験しつつ、いろいろな思いを持って必死にトレーニングをしています。男子はさらにストイックですし、その姿を見ていたら、自分もやるしかない。近道はないのでコツコツとですね」
――周囲の意識の高さも、自身の刺激になりますね。
「はい。自分の考え方も性格もちょっと変わってきているのかなと思うくらい。卒業までの10カ月間、しっかり食らいついて、成長したいです」
――選手になったら、今度はそれぞれがライバルにもなりますね。
「つねにピリピリしているっていう感じではありませんが、負けたくないライバルとして意識はしています。2年前のあの楽しかったガールズキャンプとは雰囲気は違いますね」
<きっかけは母の一言から>
――スポーツ歴を教えてください。ずっとバスケットボールですか。
「バスケを本格的にやり始めたのは小学校5年生から。それまでは水泳や空手、少しサッカーもやりました。身体を動かすのが好きだったんです」
――バスケ部のレベルは?
「中学は初心者ばかりの無名校です。高校は県大会へは行くけど東海大会の一歩手前で負けるという感じでした。その中で私はBチームでした」
――部活ライフは充実していた?
「夢中というほどではなかったですが、バスケが好きだったので、練習は苦ではなかったです。ただ、部員数が多いこともあって、あまり動けませんでした。もう少し汗をかきたかったかな」
――引退してすぐに競輪選手の道に?
「就職するか、進学するかで迷っていた高3の夏に、母がガールズキャンプに参加したらと誘ってくれたんです。進路も決まっていなかったですし、身体も動かしたかったので、ちょっとやってみようかな、くらいの軽い気持ちで参加したのがきっかけですね」
――そこで競輪をやってみたいと?
「はい。その3泊4日のキャンプが、とても楽しくて、競輪に対してよいイメージしかわ
かなかったんです。相部屋の人たちとも仲良くなれて、競輪の世界にも触れられて、充実していました。すぐに受験を決めました。その年は2次試験で失敗してしまったのですが、1年後にもう一度チャレンジして合格できました」
――その1年はどんな風に過ごしていのですか?
「豊橋競輪場が実施しているガールズケイリン育成プロジェクト(T-GUP)に参加することができたので、そこでコーチングを受けながら、適性試験に向けてトレーニングをしていました。バイトもしていましたよ」
――自転車は怖くはなかったですか?
「たしかに最初は怖かったかも。でもそのスリルが楽しくて。普通の自転車と違ってちょっと漕ぐとグーンと進む、その感じが気持ちよかったです」
――実際に競輪場でレースを見たのはいつですか?
「最初の試験を前に父と一緒に。近くで見ると、本当に躍動感や迫力がすごかったです。走っている選手の懸命な姿もかっこよくて憧れました。自分もここで走りたいと思いました」
――ご両親は、賛成してくれた?
「父は自分でもギャンブルを楽しんでいましたし、むしろそっちの道に行ってほしいと思っていたはず(笑)」
――養成所に入ってみて、その生活ぶりはどうですか?
「もっと厳しそうなイメージがあったのですが、自分は大丈夫そうです。先生方も相談しやすいですし、怒られても『すいません!』と大きな声で返事するのは、慣れているので(笑)」
――では実技の面ではどうですか?
「心配はそこです。バスケは良いプレーがひとつでも出ると自信につながります。周りも盛り上げてくれますし、自分もノッてくる感じがありました。チーム競技だったのでごまかしも効いたかもしれません。ただ、個人競技の競輪の場合は自分の実力がすべてタイムで出てしまうんです。そのことにいまだに慣れず、なかなかモチベーションが上がらないんです」
――目標が明確だからこそ、モチベーションが上がりそうですが?
「毎日の練習でもタイムを測っているのですが、自分でも乗れていたな、と感じても、実際のタイムを聞くとそうでもなくて……。自信や満足感が得られず、もどかしさを感じてしまいます。先生にはこの時期のタイムは気にしなくていいよって言われますが、聞かされれば、気になりますよね?」
――周囲のレベルは高いですし、甘くない世界だと感じているのでは?
「養成所に入ってみて改めて感じますね。全国各地から競技経験も、年齢もさまざまな方が集まり、それぞれ挫折を経験しつつ、いろいろな思いを持って必死にトレーニングをしています。男子はさらにストイックですし、その姿を見ていたら、自分もやるしかない。近道はないのでコツコツとですね」
――周囲の意識の高さも、自身の刺激になりますね。
「はい。自分の考え方も性格もちょっと変わってきているのかなと思うくらい。卒業までの10カ月間、しっかり食らいついて、成長したいです」
――選手になったら、今度はそれぞれがライバルにもなりますね。
「つねにピリピリしているっていう感じではありませんが、負けたくないライバルとして意識はしています。2年前のあの楽しかったガールズキャンプとは雰囲気は違いますね」