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レスリングの乙黒拓斗が残り15秒で逆転の金メダル!「開催を信じて準備したことがラストで生かされた」【東京五輪】

THE DIGEST編集部

2021.08.07

乙黒拓斗の劇的な勝利により今大会5個目のメダルが日本レスリング界にもたらされた。(C)Getty Images

 東京五輪のレスリング競技は8月7日に男子フリースタイル65キロ級の決勝が行なわれ、初出場の乙黒拓斗(自衛隊)がハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)に終了間際で逆転し、金メダルを獲得した。

 前日に行なわれた準決勝で世界ランク1位の強敵ラシドフに競り勝って波に乗る乙黒。決勝の相手アリエフは、世界選手権3度優勝の実力者。ともに高速タックルを武器にする大一番は、第1ピリオドで乙黒が2ポイントを奪うが、続く第2ピリオドではアリエフに2点を返される。そのままいけばラストポイント・ルールで乙黒の敗退が決まる。

 だが、乙黒は諦めなかった。時計の針がラスト15秒を指した時、再び高速タックルに出るとアリエフを崩して値千金のポイントを獲得。すると土壇場で流れを変えた注目の22歳は、そのまま逃げ切り栄冠を手にした。

 マットを降りた乙黒は涙を浮かべ「苦しいことが多くて…、でも周りの人のおかげで、ちょっとずつ前に進んで。本当に夢を叶えられて凄くうれしいです」と声を震わせた。
 
 メダル候補としての重圧と戦いながらも結果を出した乙黒は「今大会ではフリーでメダルが取れていなくて、(そうした中で)自分に回ってきて、トーナメントも厳しいものでしたが、皆が一致団結して自分を勝たせようとしてくれて、凄くうれしいです」と心境を語った。

 そして終盤、"このままでは勝てない"と窮地に追い込まれた時のことについては、「大会が延期されて開催されるかわからなかったんですけど、開催されると信じてできる準備をしてきた。その準備がこうしてラスト30秒で本当に生かされた。それで後半最後、取ることができました」と振り返る。

 今大会では兄の圭祐が同じフリースタイル74キロ級の初戦で敗退。その思いの背負っての戦った乙黒は、「二人で金メダルは叶わなかったので、そのぶん自分が全力を出して兄の借りも返したいと頑張りました」と胸を張った。

 レスリング最終日に乙黒がもたらした金メダルは、日本男子レスリング界にとってロンドン五輪の米満達弘さん以来の偉業達成となった。

構成●THE DIGEST編集部

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