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ラグビー

「オールブラックスに脅威を!」イングランド主将が明かす対ハカ“V字大作戦”の真相【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.27

オールブラックスの「ハカ」に対峙するイングランド代表。ファレル主将(右から2人目)がニヤリとほくそ笑む。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

オールブラックスの「ハカ」に対峙するイングランド代表。ファレル主将(右から2人目)がニヤリとほくそ笑む。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 横浜国際総合競技場を埋め尽くした6万8000を超える大観衆が、一斉にどよめいた。そのとき、イングランド代表の主将オーウェン・ファレルは、不敵な笑みを浮かべていた。

 土曜日に開催されたラグビーワールドカップ準決勝、イングランド対ニュージーランドの一戦は、終始鉄壁ディフェンスを貫き、試合巧者ぶりを示したイングランドが19対7で快勝。そのキックオフ前から開始1分36秒の先制トライに至るまでの時間、ラグビー発祥の国は強敵相手にさまざまな“仕掛け”を繰り出した。

 オールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)が試合前に行なう伝統の儀式「ハカ」。いまにも始まろうかという瞬間、まさに会場中の期待が高まるタイミングだ。やがて漆黒の軍団が陣形を組むと、なんとそれに呼応してイングランドの選手たちがV字型に広がって、オールブラックスを囲むように対峙したのである。複数名がニュージーランド陣内に入り込んでいたため、さすがに主審が戻るよう促すが、まるで聞き入れようとしない。そのまま「ハカ」が披露されるという、なかなかお目にかかれないレアな光景だった。

 その後、イングランドはキックオフで変化を付ける。ボールを掴んでいたSOジョージ・フォードがいきなり横にいたCTBファレルにパス。そしてキャプテンがボールを蹴るという意表を突き、ニュージーランドに揺さぶりをかける。するとイングランドはターンオーバーに成功し、敵陣深くでのラックからCTBマヌ・トゥイランギが抜け出して鮮やかにノーホイッスルトライを決め込む。まさにしてやったりの電撃作戦だった。

 結果的には、この立ち上がりの「7点」が大きくモノを言った。序盤の心理戦に打ち勝ったという見方もできるだろう。

 記者会見でハカ時のアクションについて問われたファレルは、「自分たちとしては、普通にそこに立っているだけでハカを受けたくなかったし、終わりたくもなかった。あくまで相手に脅威を与えるような距離を保ちながら、フラットラインではない状態で受けようと思ったんだ」と、さらりと答えた。

 そして試合に対しては「とにかく自信を持って冷静に振る舞うことができたと思う。すべてはしっかりとした準備があればこそ。こうしたビッグゲームではなかなかそうした境地にはなれないけど、僕たちはニュージーランドがトライを決めて(点差を)詰めてきてもいっさい動じなかった」と胸を張った。
 決勝トーナメントに入って、母国イングランドから来日を果たすファンが一気に急増した。この日の横国には2万5000近くのサポーターが押し寄せ、国歌『God Save the Queen』に応援歌『Swing Low, Sweet Chariot』と大合唱が重低音で響き渡り、日本のファンの度肝を抜いた。強力な援軍を得てさらに勢いを増し、来週土曜日の決勝戦に臨む。

 ファレル主将は「いまはこの大会を本当に楽しんでいる。ファイナルも思い切り楽しみたいね」と語り、笑顔を見せた。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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