専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
ラグビー

最強オールブラックスはなぜ完敗を喫したのか。世界王者が強いられた「50・50の判断」【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.27

イングランドに敗れ、呆然と立ち尽くすリード主将。オールブラックスが誇るNO8は今大会限りで代表を引退する。(C)Getty Images

イングランドに敗れ、呆然と立ち尽くすリード主将。オールブラックスが誇るNO8は今大会限りで代表を引退する。(C)Getty Images

 プール戦で南アフリカを圧倒し、準々決勝でアイルランドを蹴散らした猛者たちが、なす術なく完敗を喫した。

 土曜日に横浜国際総合競技場で行なわれたラグビーワールドカップ準決勝、イングランド対ニュージーランドの一戦。開始1分36秒で先制トライを決められたオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)は、すぐさま立て直して懸命の反撃に打って出るが、イングランドの鉄壁守備に行く手を阻まれ、ファウルやミスを重ねてしまう。前半を0対10で折り返すと、後半も自慢の創造性溢れるアタックは鳴りを潜めたまま。56分に敵ラインアウトのミスを突いてサベアがトライをねじ込むも、ブレイクダウンやセットピースで後手に回り、PGを献上しては突き放された。

 7対19。テリトリー(地域支配率)は38%対62%と凌駕され、内容にはスコア以上の差があった。ワールドカップでの黒星は、2007年大会の準々決勝でフランスに敗れて以来、実に12年ぶり。連勝は18試合で止まり、史上初となる大会3連覇の夢はついえた。

 試合後、スティーブ・ハンセンHCは「まずはイングランドにおめでとうと伝えたい。自分たちより良いチームに負けた。スポーツでは得てしてフェアじゃない結果がままあるが、今日はそうではない。彼らのほうが優っていた。だから、後悔はない」と切り出し、インプレッションを語った。

「イングランドがキックオフ直後から、前に進む勢いを掴んだ。一方で我々はセットピースやブレイクダウンでなかなか思うようにプレーできず、ほとんどの場合で50・50(フィフティー・フィフティー)の判断をしてしまった。言い訳にはしたくないが、試合でそういう判断が多くなると、やはりスコアはどんどん離れて追う展開となってしまう。ブレイクダウンで焦りが出て、オフロードパスをする必要がないところでやってみたり。選手たちはいろいろと試してはいたが、今日はイングランドに圧倒されたと言うほかない。全力を尽くしたが、負けてしまったのだ」
 ハーフタイムで指揮官は「受け身にならず、ここから仕掛けていこう。よりいっそうのハングリー精神を持って臨み、セットピースとラインアウトで土台を築こう」と選手たちに発破をかけたが、状況は好転しない。「ボールを持ってもイングランドのディフェンスが堅固で、まるで前に進まない。あれだけ激しく来られるとどうしてもボールが手に付かず、ミスが多くなる。それは相手も同じだったと思うが、今晩は我々が至らなかった。相手のレベルに至らなかったということだ」と潔く認めた。

 2011年12月から務め上げてきた要職での采配も、残り1試合となった。金曜日に行なわれる3位決定戦だ。ハンセンHCは「敗れた痛みはあるが、恥じてはいない。ポジティブであるべきだ」と言い切る。そして「次の試合に向けてすでにエキサイトしているよ」と話し、会見場を後にした。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

【PHOTO】イングランド×ニュージーランド戦を盛り上げたサポーター特集!まさかの王室2ショット?!
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号