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ラグビー

「どうしてもお辞儀がしたかった」ウェールズ代表が日本に示し続けた“特大のサンクス”【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.28

美しき敗者、ウェールズ代表。準決勝後は長い時間をかけて、スタンドの観衆に感謝の意を表した。(C)Getty Images

美しき敗者、ウェールズ代表。準決勝後は長い時間をかけて、スタンドの観衆に感謝の意を表した。(C)Getty Images

 ウェールズ代表が誇る生ける伝説は、片手にコーラの缶を持ち、真紅のジャージを着替えることもなく、会見場に姿を現わした。憔悴し切った表情で言葉を絞り出したのは、主将で名ロックのアラン・ウィン・ジョーンズだ。

 日曜日に行なわれたラグビーワールカップ準決勝、南アフリカ戦。ゲーム最終盤にPGで突き放され、ウェールズは16対19で涙を呑んだ。同国史上初となるワールドカップ決勝進出は、またしてもお預けとなってしまった。

 34歳は「今日は我々の日ではなかった。傷めつけられ、ひどく失望している」と正直な気持ちを吐露し、「まるでチェスのようなゲームだったが、我々にはなにかが少し足りなかった。とくにセットピースでの差は、こうした拮抗した試合で決定的な違いを生む場合がある」と、インプレッションを述べた。

 その試合直後だ。ピッチ中央にウェールズ代表の全選手が横並びで集結し、スタンドの四方に向かって一度ずつ、深々と丁寧なお辞儀をした。スタンドから万雷の拍手を浴びた感動的な光景について質問されると、ジョーンズ主将は次のように答えて、日本への熱い想いを明かした。

「日本に来てから、四方向に向かってずっとお辞儀をしてきた。(最初の合宿地である)北九州で1万5000人ものファンの方が練習を観に来てくれて、本当に感動したのを覚えている。日本に来てすぐに、自分たちがどれだけ歓迎されているのかが分かったからだ。それからは、練習とゲームの終わりに、ずっとああやってお辞儀をしてきた。感謝の気持ちを表わしたかったから……。台風で甚大な被害を受けたあとでさえ、日本の人びとは練習やゲームがちゃんと行なえるようにと、最善の努力をしてくれた。ヒュージ・サンクス(特大の感謝)をただ、伝えたかったんだ」
 レッドドラゴンズ(ウェールズ代表の愛称)にはまだ1試合が残されている。金曜日に東京スタジアムで開催される、ニュージーランド代表との3位決定戦だ。

 ジョーンズは「もう一度、気持ちを奮い立たせてニュージーランド戦に臨みたいと思う。我々には歴史を作る(史上2度目の3位になる)機会があるわけだからね。しっかりと準備したい」と気丈に語り、前を向いた。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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