昨年9月、アメリカで開催された格闘界の試合が小さくない波紋を広げた。
同月15日に行なわれたアメリカの総合格闘技イベント『Combate Global』での一戦で、元男性のトランスジェンダーである38歳のアラナ・マクラフリン(アメリカ)が、MMAルールでデビューを飾ったのだ。
試合はマクフラリンの圧勝だった。対戦相手となったセリン・プロボースト(フランス)に付け入る隙を一切与えなかった彼女は、わずか1ラウンドで裸締めによる見事なKO勝ちを収めたのである。
ホルモンテストを含むあらゆるメディカルチェックはパスしており、ルール上は女性として問題なく戦える。しかし、元米軍特殊部隊の隊員だったというバックボーンに加え、プロボーストとの明らかな筋肉量の違いなどマクフラリンの参戦には非難が殺到した。
元UFCヘビー級王者で、MMAの酸いも甘いも知り尽くすマイケル・ビスピン(英国)は、「トランスジェンダーの権利について話をしているんじゃない」と前置きしたうえで、「女性と闘うのはあまりにも無理がある。男性の身体を持った女性の場合は、あきらめなければいけないこともあると思う」「不公平さを生む」と苦言を呈した。
批判のなかには、ビスピンのように経験に裏打ちされた理論的なものではなく、トランスジェンダーに対する誹謗中傷も目立った。ゆえに当の本人は黙ってはいられなかった。英スポーツ専門メディア『Sport Bible』によれば、マクフラリンは自身のツイッターで「私が男性のふりをしていたなら2010年にMMAの試合をしていた」と反論した。
「大半のトランスフォビア(トランスジェンダーに対する否定的な態度、言動、嫌悪)は、私が男性に勝てないから女性と戦うためにこっち(女性)にきたのだと主張している。でも、もしも私が男性のふりをし続けていたら、2010年にはMMAの試合を始めていた。
まるで、私がグローブも、医者も、審判もいない危険な場所で闘ってきていないかのように言われている。私は刺されたり、撃たれたり、吹っ飛ばされたりもしてきたというのに。"アレ"(男性器)があるから強いんじゃない。女性はあなたたちが思っているよりも強い」
強い表現で、己の信念を打ち明けたマクフラリン。デビュー戦後のインタビューで「同じような悩みを抱えた子どもたちがチャンスを得るキッカケになってほしい」と女性としての格闘技キャリア続行の意思を貫いた彼女だが、はたしてどうなるのか。2022年の動向が注目を集めそうだ。
構成●THE DIGEST編集部
同月15日に行なわれたアメリカの総合格闘技イベント『Combate Global』での一戦で、元男性のトランスジェンダーである38歳のアラナ・マクラフリン(アメリカ)が、MMAルールでデビューを飾ったのだ。
試合はマクフラリンの圧勝だった。対戦相手となったセリン・プロボースト(フランス)に付け入る隙を一切与えなかった彼女は、わずか1ラウンドで裸締めによる見事なKO勝ちを収めたのである。
ホルモンテストを含むあらゆるメディカルチェックはパスしており、ルール上は女性として問題なく戦える。しかし、元米軍特殊部隊の隊員だったというバックボーンに加え、プロボーストとの明らかな筋肉量の違いなどマクフラリンの参戦には非難が殺到した。
元UFCヘビー級王者で、MMAの酸いも甘いも知り尽くすマイケル・ビスピン(英国)は、「トランスジェンダーの権利について話をしているんじゃない」と前置きしたうえで、「女性と闘うのはあまりにも無理がある。男性の身体を持った女性の場合は、あきらめなければいけないこともあると思う」「不公平さを生む」と苦言を呈した。
批判のなかには、ビスピンのように経験に裏打ちされた理論的なものではなく、トランスジェンダーに対する誹謗中傷も目立った。ゆえに当の本人は黙ってはいられなかった。英スポーツ専門メディア『Sport Bible』によれば、マクフラリンは自身のツイッターで「私が男性のふりをしていたなら2010年にMMAの試合をしていた」と反論した。
「大半のトランスフォビア(トランスジェンダーに対する否定的な態度、言動、嫌悪)は、私が男性に勝てないから女性と戦うためにこっち(女性)にきたのだと主張している。でも、もしも私が男性のふりをし続けていたら、2010年にはMMAの試合を始めていた。
まるで、私がグローブも、医者も、審判もいない危険な場所で闘ってきていないかのように言われている。私は刺されたり、撃たれたり、吹っ飛ばされたりもしてきたというのに。"アレ"(男性器)があるから強いんじゃない。女性はあなたたちが思っているよりも強い」
強い表現で、己の信念を打ち明けたマクフラリン。デビュー戦後のインタビューで「同じような悩みを抱えた子どもたちがチャンスを得るキッカケになってほしい」と女性としての格闘技キャリア続行の意思を貫いた彼女だが、はたしてどうなるのか。2022年の動向が注目を集めそうだ。
構成●THE DIGEST編集部