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「議論のチャンスもなかった」ノルウェー五輪委員会の理事が“ロシア除外”に抗議の辞任! 露側からは「勇敢だ」など称賛の声

THE DIGEST編集部

2022.03.16

北京五輪・金メダリストのステパノワはヴァッテルダル氏の決断を支持。「大きなステップになる」とも。(C)Getty Images

 現地時間3月15日、ノルウェー・オリンピック委員会(NOC)は、同委員会理事にしてアスリート委員会で副代表を務めるオイビンド・ヴァッテルダル氏の辞任を発表した。
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 リリースから少し遅れて、クロスカントリーの元ノルウェー王者は辞任に至った経緯を公共放送『NRK』のオンライン上で明かした。ロシア軍によるウクライナ侵攻を受けて、2月下旬にIOC(国際オリンピック連盟)はロシアとベラルーシの選手団の国際大会出場を禁止するよう、各競技連盟に勧告。NOCはすぐさまこれを認可したが、ヴァッテルダル氏は「時期尚早」と考えていたようだ。

 34歳は「今回の(NOCの)決定は、ロシアとベラルーシのアスリートたちを国際大会から除外しようとするIOCの呼びかけをベースに下された。スポーツとはどうあるべきか、私の価値観とは明らかに異なる決定だった」と断じ、「それゆえに、現在の職務を全うできないという結論に至った」と説明した。

 さらにヴァッテルダム氏は「これによってなにかを導き出そうとは思っていない。ただ、ロシア人の仲間たちに寄り添い、この先も彼らの目を見られるような行動を取りたかっただけだ」と綴り、「もっと議論を重ねるべきだったがそのチャンスすらなく、私は参加さえさせてもらえなかった。私は戦争に強く反対しているし、恐怖に震えているウクライナの知人を持っている。だがやはり、スポーツと政治を混同してはいけない。言い訳がきかない大きな決断になった」と主張している。

 NOCのベリット・ケル会長はヴァッテルダル氏の辞任を受け、同じく『NRK』にコメントを寄せている。「彼の決断はきわめて残念だ」としつつも、「我々の判断は間違っていなかったと信じる。2月26日というタイミングは迅速かつ的確な動きであったと考えており、他の国やスポーツ連盟も追随する形となった」と述べた。
 

 一方で、ロシア・スポーツ界からはヴァッテルダル氏のアクションを称える声が相次いでいる。

 北京五輪の女子クロスカントリー(4×5キロリレー)で金メダルを獲得したヴェロニカ・ステパノワは「ヴァッテルダルさんの辞意表明に敬意を表します。西側のすべてのひとが今回の違法で無慈悲な決定を支持しているわけではないことを知り、嬉しく思います。この抗議が大きなステップになるでしょう」とのメッセージを、ヴァッテルダル氏のSNSに書き込んだ。

 ロシア・フィギュアスケート界に君臨する名コーチ、タチアナ・タラソワ氏も同調する。こちらは「まだこんなにちゃんとした人びとがいるなんて興味深いですね。素晴らしい決断であり、勇敢だと思います。世界のスポーツの尊厳を守ったという意味でも、彼は評価に値します」と賛辞を送った。

構成●THE DIGEST編集部

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