数多の激闘をくぐり抜けてきたレジェンドの凄みが出た一戦だった。去る４月９日にさいたまスーパーアリーナで行なわれた村田諒太（帝拳）とゲンナジー・ゴロフキン（カザフスタン）のボクシングWBAスーパー、IBF世界ミドル級王座統一戦である。
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　村田が序盤から積極果敢に攻めに出て、難攻不落と言われた相手の牙城を切り崩しにかかった試合は、「ゴロフキンの圧倒的優位」という下馬評が崩れるかに思われた。しかし、５回に息を吹き返したゴロフキンは、そこから一気に攻勢を強めて形勢を逆転。９回には怒涛のラッシュで畳みかけると、敵陣営からタオルが投げ込まれた。

　両雄が持ち味を発揮した崇高な闘いだった。そのなかでやや打ち込まれる場面が多かったゴロフキンには、今年９月の開催が囁かれている４階級王者のサウル・アルバレス（メキシコ）戦に向け、疑念を抱くメディアもある。米紙『LA Times』は「GGG（ゴロフキンの愛称）の最盛期は過ぎた。カネロ（アルバレスの愛称）との勝負は危険だ」と警鐘を鳴らした。

　一方で、完全なる守勢から盛り返したさすがの逆転劇を評価する人物もいる。かつて世界２階級王者（WBC世界バンタム級、WBC世界スーパーバンタム級）に輝いたダニエル・サラゴサ氏だ。
　現役時代には辰吉丈一郎を２度破った経験があり、日本のボクシング・ファンにも馴染みのある名手は、メキシコのボクシング専門メディア『Izquierdazo』の取材で「私はゴロフキンのパフォーマンスに感銘を受けたよ」と40歳のベテラン戦士を絶賛した。

「ムラタは、GGGのパワーに最後まで耐えられなかった。批判は起きているのかもしれないが、そんなものはどうでもいい。日本人に日本で勝つのは簡単じゃないんだ」

　村田へのリスペクトを示しつつ、ゴロフキンへの賛辞を惜しまないサラゴサ氏。彼は、最後にこうも言い放っている。

「カネロに勝てるかはわからない。ただ、私は９月にふたりが闘うところがみたい。ボクシングはスタイルが肝になる。だから、何が起きてもおかしくはないんだ」

　仮にカネロとゴロフキンが激突すれば、2018年９月以来３度目となる。ここまでいずれも勝ててないカザフスタンの英雄が、今度こそ宿敵から白星を掴めるかに注目が集まりそうだ。

構成●THE DIGEST編集部