格闘技・プロレス

世界が沸いたゴロフキン戦をなぜ? 村田諒太が“激闘”を一度も目にしなかった理由「僕はナルシストじゃない」

THE DIGEST編集部

2022.08.03

列島を大いに盛り上げたゴロフキン戦。それを村田は今の今まで目にしてこなかったという。写真:徳原隆元

 文字通りの激闘だった。今年4月9日に行なわれたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と村田諒太(帝拳)によるWBAスーパー・IBF・IBO世界ミドル級王座統一戦だ。

 試合は序盤から仕掛けた村田ペース。右ストレートとボディーへのフックを効果的に繰り出し、対峙したレジェンドファイターを苦しめた。しかし、中盤からゴロフキンのジャブが効き始めると、流れが変わる。

 村田もタフネスを見せつけた。だが、相手の攻撃の手はここぞとばかりに緩まない。そして、最後はゴロフキンが容赦なくラッシュをかけ、村田陣営から無念のタオルが投げ込まれた。

 9回TKO負けだった。しかし、試合直後に39歳のレジェンドは、「最も尊敬する人に贈る」という意味がある母国カザフスタンの伝統衣装「チャパン」を手渡し、「彼のチームにお礼と称賛の言葉を送りたい」と敬意を表した。おそらく、お世辞ではない。それほど村田の試合運びや闘志は際立っており、ゴロフキンのダメージも計り知れないものがあった。

 各国メディアが「ムラタは何も恥じることはない」(米専門誌『The Ring』)や「日本の希望だったムラタとの決闘は壮大なものとなった」(スロベニア・メディア『Net.hr』)と軒並み絶賛した大一番。ただ、意外にも村田は試合後のおよそ4か月間、ゴロフキンとの試合を見返していなかった。
 
 それには高みに辿り着いた男なりの理由があった。WOWOWの「村田諒太出演! エキサイトマッチSP『村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン』」の収録後に行なわれた取材で、村田は、「いつも試合を観るのは、次に活かすために観るんです」と明かした。

「観る=緊張じゃないですか。やっぱり試合を観ると『ああしよう』『こうしよう』とか思ってしまって緊張状況が生まれる。あと僕はナルシストじゃない。自分の試合を観て、『強いな』とか『かっこいいな』って思ったことは1回もないので」

「観る=反省がセット」だという村田は、「いまは反省の先にある次が決まっていない」。だからこそ、あれだけの熱戦も目にしてこなかった。

 気になる「次」はいつ来るのか。あとは「決断だけじゃないですかね」と語った36歳が、それを下すには、もうしばらく時間が必要なのかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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