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米国初3Aジャンパーが“4回転アクセル転倒“の全米王者マリニンを擁護「前人未踏なことは本当に大変なんだ」

THE DIGEST編集部

2023.01.31

マリニンは全米選手権初制覇も冒頭の大技4回転アクセルで転倒。後半にもミスが続出し、演技後は笑顔がなかった。(C)Getty Images

マリニンは全米選手権初制覇も冒頭の大技4回転アクセルで転倒。後半にもミスが続出し、演技後は笑顔がなかった。(C)Getty Images

 笑顔なき全米王者に、母国のレジェンドスケーターがエールを贈っている。

 フィギュアスケートの全米選手権、男子フリーは現地時間1月29日に行なわれ、人類史上初めて4回転アクセルを成功させた18歳のイリア・マリニンが初の全米王者に輝いた。

“4回転の神”マリニンはショート首位で折り返すと、フリーの冒頭で大技4回転アクセルに挑戦した。注目の大技は幅のある高いジャンプだったが、惜しくも転倒してしまった。続くフリップ、ルッツ、サルコウの4回転ジャンプは着氷し、冒頭の悪い流れを断ち切ったかに見えた。

 しかし、後半の4回転ルッツを含んだ3つのコンビネーションが2回転ルッツの単独になると、続く4回転トゥループ+3回転トゥループが2回転トゥループ+単独トゥループになってしまうなどミスを連発。最後のジャンプは3回転ルッツ+トリプルアクセルに3回転トゥループをつけて挽回したが、演技を終えた18歳は首を横に振り、表情も険しかった。

 フリーの得点は177.38点、合計287.74点で2位以下を10点以上離して全米選手権初優勝を飾ったが、“4回転の神”に笑顔はなかった。

 米放送局『NBC Bay Area』は新王者に輝いたマリニンについて「(女子シングルの)15歳イザボー・レビトとともに全米選手権初優勝を果たし、米国シングルスケート界の新時代の幕開けを告げる存在」と配信した。

 男女シングルで新王者が誕生したことを称えたものの、「金メダルに輝いたマリニンのフリースケーティングは完璧だったわけではない。(彼は)得意のクワッドアクセルで転倒してしまった」とマリニンの演技は精彩を欠いていたと言及。他のメディアも厳しい評価を下している。
 
 ところが、厳しいジャッジを下すメディアのなかで、地元のレジェンドスケーターは悲観すべきではないと語っている。1988年カルガリー五輪の金メダリストであるブライアン・ボイタノ氏である。

 同氏は同五輪のフリーで2度のトリプルアクセルを含む3回転ジャンプを合計8本成功させ、当時の男子として最高難易度のプログラムを滑り切った米国の伝説スケーターであり、米国人として史上初めてトリプルアクセルを成功させた人物でもある。

 配信記事によると、ボイタノ氏は「パイオニアになるのは難しい」と語ったうえで「誰もやったことがない前人未踏のことをやるときは、本当に大変な状況なんだ。自分を追い込まないといけないんだ」と先駆者だからこそ受ける大きなプレッシャーがあると説き、笑顔なき18歳の全米王者を擁護している。

 納得のいかない演技だったとはいえ、マリニンのチャレンジ姿勢は母国のレジェンドスケーターにはしっかりと伝わっている。

構成●THE DIGEST編集部

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