痛恨の敗北に悲嘆の声が溢れている。

　現地９月28日、フランス・トゥールーズで行なわれた「ラグビーワールドカップ（W杯）2023」の１次リーグD組の第３戦は、１勝１敗同士で迎えた日本代表とサモア代表が激突。火花が散った激闘は28-22で日本が接戦を制し、決勝トーナメント進出に王手をかけた。
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　日本は緊急事態をチーム一丸で乗り切った。２日前に発表された先発メンバーからSH流大が、故障のため当日欠場が決定。控えから斎藤直人が先発に繰り上がりカバーした。サモアの強力なモールに日本は苦戦するも、粘り強さと素早い展開から３トライを奪取。難敵を振り切り、今大会２勝目を収めた。

　一方、ノーサイドのホイッスルが鳴ると、勇猛なサモア戦士らはグラウンドに倒れ込み、うなだれた。世界ランキングでは日本よりランクがひとつ上の12位。フィジカルを全面に押し出したパワーラグビーでねじ伏せようとしたが、大事なところで連携ミスが続出。攻撃のリズムが悪く、イライラを募らせるシーンも見受けられた。

　さらに不用意なラフプレーも自らを苦境に陥れた。後半９分にWTBベン・ラムが危険なタックルを犯し、イエローカードで一時退場となるが、その後「バンカーシステム」の検証結果によりレッドカードに格上げ裁定。同選手は退場となり、サモアは残り時間を14人で戦う劣勢を強いられた。終盤にサモアは連続トライを奪い、６点差まで日本を追い詰めたが反撃もここまでだった。
  　サモアの獣を意味する「マヌ・サモア」の愛称で呼ばれるチームの敗北に、自国メディアは衝撃を受けている。サモア最大の日刊紙『Samoa Observer』は「マヌ・サモアが日本に敗れた」と単純明快な見出しを打ち、勇敢なサモア戦士らがピッチに倒れ伏す写真を並べながら試合を振り返っている。

　同紙は「ベン・ラムが頭部へのタックルでレッドカードを受けたため、サモアは後半のほとんどを14人で戦った」と言及。ひとり少なくなった後半の退場劇が試合を大きく左右したと嘆いた。

　主将を務めるフリッツ・リーは同メディアに対し、「勝つための努力はしたが、ゲーム序盤からうまくいかず、基本的な部分で国民を失望させてしまった。日本は私たちよりも組織的で迫力があったし、私たちはもっとボールを保持しなければならなかった。あれだけ獲得したペナルティキックが、最後まで役に立たなかった」と反省を口にする。

　決勝トーナメント進出のためには、次戦イングランド戦の勝利が絶対条件となる。「素晴らしい雰囲気を作ってくれた私たちのファンには申し訳ない。でも、彼らはまだ私たちを応援してくれるはずだ」と話し、強敵相手にネバーギブアップを誓っている。

　英国のラグビー専門メディア『Planet Rugby』は、日本対サモア戦の寸評記事を配信している。10点満点評価で、サモア選手は軒並み５点以上が並ぶなか、退場の憂き目にあったラムだけは『３点』とチーム最低点をつけ、「ベン・ラムのレッドカードにより、サモアに大きな代償を払わせた」と背番号11を痛烈に断じ、戦犯に挙げている。

　記事内では、「常に反則だったタックルで退場処分を受けただけでなく、日本陣内22メートルでスクラムからのボールを落とした。ウインガーにとっては忘れられない夜となった」と辛口採点だった。

　日本は現地10月8日のアルゼンチン戦に勝てば、前回大会に続くベスト８入りを自力で決められる。難敵をなんとか打ち倒したが、ブレイブ・ブロッサムズ（日本代表の愛称）の負けられない戦いは続く。

構成●THE DIGEST編集部

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