ラグビー

「…だめですね」大一番で日本代表に突き付けられた現実、選手たちはどう受け止めたのか?【ラグビーW杯】

向風見也

2023.10.10

優位に立ったかに見えたスクラムも選手目線では、そうとも言い切れないようだ。(C) Getty Images

 現実を再認識させられた。体格差に劣る日本代表が勝つには、緻密な計画をほぼノーミスで遂行しきらなければ強豪国を打ち崩すのは難しいのだろう。

 左プロップの稲垣啓太は、悔しさをこらえて淡々と述べた。

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「負けたということが全てです。今まで準備してきたことが、80分間、全ては出せなかった。アルゼンチン代表には頑張って欲しいなと」

 現地時間10月8日、スタッド・ド・ラ・ボージョワールでのラグビーワールドカップ予選プールD最終戦。南半球で揉まれるアルゼンチン代表に27-39で屈した。

 攻めてはロックのアマト・ファカタヴァの個人技と、スリリングなパス回しから計3トライ。スクラムハーフの齋藤直人は、高速展開を維持した。「相手がキックを蹴った後は外側にスペースができる」と見て、特にハーフ線付近ではその通りに繋いだ。「いいテンポでプラン通りにやれれば得点は獲れる」と、確かな手応えを掴んだ。

 ただし、敵陣ゴール前に進みながらエラーを重ねることもあった。向こうのタックルが強烈とあり、理想通りとはいかなかった。

 報道陣に問われ前向きな談話を残す齋藤も、第一声は手厳しかった。序盤にあった、自らの球出しのミスを悔やんでいた。

「…だめですね」

 守っては、ミットフィールドでの強烈なタックルで鮮烈な印象を与えながらも要所で後手を踏んだ。

 0-0だった前半2分、14―15で迎えた後半6分の失点シーンでは、警戒していたグラウンド中盤でのラインアウトモールをその起点とした。

 前者はラインアウトで競らず、後者はあえて競り合い、その後のモール封じに出たが、じりじりと押された。

 さらに後半18、28分には、得点直後のキックオフから瞬く間にトライを与えた。いずれも攻守のミスが絡んだ。流れを掴み損ねた。

 ナンバーエイトの姫野和樹主将が「相手のエリア(敵陣)に行くということを忘れてしまいがちになっていました。そこは反省点です」とするなか、稲垣はこう続けた。

「自分たちが準備したことを発揮できた部分、できなかった部分があり、できなかった時に失点している。特に自分たちが得点した後に、相手はスコアをしましたよね。そこが、大きなミスでした。(当該のキックオフでは)想定していたところとは別なところに蹴ってこられた。(捕球役が)孤立した状態で取らなければならず、そこで後手に回ったかなと」
 
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「いいスクラムが組めた瞬間もありました。ただ80分間を通して組めたかというと…」