ラグビー

南アフリカの選手が罵った”人種差別発言”の波紋止まらず! 豪放送局は苦言「音声と映像では主審に苦情を言っている!」【ラグビーW杯】

THE DIGEST編集部

2023.10.24

南アフリカのムボナンビ(左)は、イングランドのカリー(右)に対し人種差別的な暴言を吐いた疑惑が向けられている。(C)Getty Images

 南アフリカの名フッカーに注がれる「疑惑の発言」が波紋を広げている。

 事の発端は現地10月21日に行なわれたラグビーワールドカップ準決勝、イングランド対南アフリカ戦で起きた。前日にニュージーランドが決勝進出を果たし、残り1枠を懸けてラグビー強豪国が激突する屈指の好カードだった。

 試合は劣勢だった南アフリカが残り3分のところで逆転に成功。最終盤のイングランドの猛攻をしのぎ、16-15で振り切る劇的な展開で死闘は幕を閉じた。

 ところがノーサイド後、一部の選手が揉み合う不穏なシーンがあった。大きな騒動には発展しなかったが、実はゲーム中に伏線はあった。南アフリカのボンギ・ムボナンビが、イングランドのトム・カリーに「この白人野郎」と罵る人種差別的な暴言を浴びせたとの疑惑が浮上。カリーは前半30分過ぎにベン・オキーフ主審に「もし彼らのフッカーが私を白人呼ばわりしたら、私はどうすればいい?」と尋ねると、主審は「何もしないでくれ」と答え、カリーは少し間をおいて「分かった」とだけ言ってプレーに戻った。

 試合後、カリーはミックスゾーンで記者から「ムボナンビが試合中に言ってはいけないことを言ったか」と問われると、「そうだね」と人種差別的な発言があったと認めた。「どんな内容を言われたのか?」との追加質問には詳しく答えなかったが、「問題は解決していない」と訴えた。ちなみに、ムボナンビは試合後カリーとの握手を拒否している。
 
 この騒動をカリーの母国メディアが報じると小さくない話題を呼び、ムボナンビの振る舞いには批判が寄せられている。

 翌日、事態を重く見た南アフリカラグビー協会(SARU)は「疑惑について把握し、非常に深刻に受け止めている。手に入る証拠を見直しているところだ」との声明を発表。「主張を裏付ける何かが見つかった場合は、ムボナンビと面談する」とも付け加えた。さらに国際統括組織であるワールドラグビー(WR)も疑惑の発言について「差別的行為の申し立てを極めて深刻に受け止めている」と述べ、調査に乗り出すほど、事態は深刻さを増している。

 至極当然、海外メディアも「疑惑の発言」について注視している。オーストラリアの公共放送局『ABC Australia』は「SARUは日曜日、独自の内部調査を開始し、『入手可能な証拠を検討している』と発表した。ソーシャルメディアに投稿された音声とビデオ映像には、カリーが主審のベン・オキーフに苦情を言っている様子が映っているが、何も措置は取られず、中傷疑惑は聞かれていない」と確かな証拠があるにもかかわらず、ムボナンビに処罰が下されていないことを疑問視している。

 同メディアはカリーが記者団の質問に対し、事件があったことを認めたが、発言されたとされる内容については言及を拒否したと紹介し、「有罪となれば、ムボナンビは出場停止処分を受ける可能性が高く、決勝を前にスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)にとっては大きな打撃となるだろう」と見通しを立てている。

 なお、イングランド代表のスティーブ・ボースウィックHCは、一連の疑惑についてコメントを一切拒否している。W杯史上に残る激闘後に生じた両国の遺恨。ムボナンビの発言が事実だとすれば、決して許されるべきではない。はたして、その真意は如何に――。

構成●THE DIGEST編集部

【動画】ムボナンビ(背番号2)がトム・カリー(背番号7)と口論する一部始終

【音声】イングランド代表のカリーが"人種差別発言"を主審に訴える実音声

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