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なぜ宇野昌磨の4回転は“すべて回転不足”がついたのか? 海外記者が元五輪代表から引き出したNHK杯辛口ジャッジの考察

THE DIGEST編集部

2023.11.30

NHK杯2位に終わった宇野。(C)Getty Images

 採点に疑問を呈した世界王者の発言が物議を醸している。

 去る11月25日、フィギュアスケートのグランプリシリーズ第6戦日本大会(NHK杯)の男子フリーが行なわれた。結果は鍵山優真が182.88点をマークし、ショートとの合計288.39点で優勝。自己ベストを大きく更新する会心の演技で、シリーズのトップ6による頂上決戦グランプリファイナル(中国・北京)の進出を決めた。

 20歳の若武者に表彰台の真ん中を譲ったが、世界王者の宇野昌磨も高いパフォーマンスを発揮した。4回転ジャンプを3種類4本組み込んだ高難度構成で臨んだ宇野は終盤の4回転が2回転にパンクするミスはあったものの、しっかりとリカバリーを意識し、直後のジャンプ構成(トリプルアクセル+2回転トウループ)を4回転+2回転の連続トウループに変更する見事な対応力を見せた。

 さらに今シーズンから重きを置いている「表現力」で観衆を魅了。指先まで意識した表現と、華麗なスピン、ステップで会場の雰囲気を支配し、王者の貫禄を見せつけた。ミスはあったとはいえ、決して悪くない演技に納得した宇野は笑顔を見せ、万雷の拍手に応えた。
 
 得点は186.35点。直後に滑った鍵山を3.47点上回るフリートップだったが、世界王者はその採点内容に首を捻った。
 
 宇野が跳んだ冒頭のループ、2つ目のフリップだけでなく、なんとすべての4回転ジャンプに4分の1回転不足を示す「q」マークが付く、かなり厳しめのジャッジが下されたのだ。

 映像で振り返ると、2つ目のフリップは着地時が少し詰まったかに見えたし、体力が落ちる終盤の回転不足はまだ理解できるが、完全に回転しきったかに見えた冒頭の4回転ループ、5つ目の4回転+3回転の連続トウループまでもが、速報値では「審議」に。のちに回転不足と判断された。

 男子シングルのテレビ解説を務めていた1998年長野五輪代表の本田武史氏は演技のスロー映像で流れたループについては「(軌道から)流れもあって良かったです」と高評価。続けてフリップが流れた直後、「最初と2つ目のジャンプにも審議のqマークがついてますね」と指摘し、その裁定の行方に注目したほど。すべての4回転ジャンプが回転不足と判断されたことで得点は伸び悩み、宇野は2位という結果につながった。

 順位確定後、宇野はインタビューで「いろんな感情はありますけど」と率直に話すと、「今の気持ちとしてはいらんことを喋りそうなんで、今は黙って帰ろうと思います」と苦笑いを浮かべながら去った。

 のちに宇野は海外メディアも含んだ取材陣の質問に、「けっこうきれいかな、と思ったんですけど。(回転不足は)厳しかったなというのは感じます」と本音を吐露。採点は人がつけるものであり、ケチをつけるつもりはないと前置きしながら、「いま言えることは、今日のジャンプ以上を練習でもできる気がしない」と言い、これ以上のクオリティは不可能だと強調した。

 世界王者は優勝した鍵山の演技を心から称賛しつつ、「ジャッジへの批判ではない」と表明しながら、回転不足とされたことへの違和感を報道陣に話した。
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女子シングルでも浮き彫りになった厳格な「回転不足」