ラグビー

「逃げることはできないとずーっと思っている」笑わない男、稲垣啓太が主張する日本ラグビーの向上に絶対不可欠な“バトル”とは?

向風見也

2024.02.02

長きにわたり日本代表の最前列を務めてきた稲垣。コンタクトエリアの勝負は不可欠だと強調する。(C) Getty Images

 ラグビーは手の使えるフットボールで、無差別級の格闘技でもある。

 日本代表として昨秋までに3度のワールドカップを経験してきた稲垣啓太は、その原理原則に倣う。
【画像】激しいタックルで相手に食らいつく!ラグビー日本代表の"笑わない男"稲垣啓太を特集!

「他の格闘技では、怪我などが起きないようにコンタクトレベル、ウェイト差、階級を統一している。ただ、ラグビーには、それがない」
 
 身長186センチ、体重116キロ。一般的には明らかに大柄も、トップレベルの舞台では2メートル、120キロ超級の猛者ともぶつかり合わなくてはならない。

「だから、フィジカルのバトルから逃げては通れないんです。フィジカル、コンタクトのエリアをやらないのは僕からしたらあり得ない。コンタクトフィジカルの向上は、上でやるのなら必要不可欠です」

 ボールより前でプレーできない競技の特性上、最前線でのぶつかり合いを避けて通るのは極めて難しいのだ。ラグビーがラン、フットワーク、パス、キックと多彩な動きの見られるスポーツであるのもわかったうえで、身体衝突を「そこ」という指示語に置き換えて言う。

「そこじゃない違うところで勝負するという気持ち(考え方がある)もわかるし、そこを第一に考えない戦術があるのもわかるんですけど――大前提として、コンタクトエリアで制圧しないと、世界でやるにはその後が難しいですよね。全て、そこから始まるので」

 ポジションは左プロップ。スクラムを負荷のかかる最前列で組みながら、突進役、タックラーとして局面に何度も顔を出す。攻めては攻防の境界線に亀裂を入れ、守っては走者を仰向けにしたり、その場に止まらせたり。

「スクラムなどのセットピース、ブレイクダウン(接点)、ボールキャリー(突進)、ディフェンス、タックル…全て、コンタクトが含まれますよね。そこからは、避けては通れない」

 2024年よりジャパンの新ヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズは、「超速ラグビー」を謳っている。万事における速さを求める。

 もっとも、「コンタクトで勝っていかないといけない」とも強調する。「超速」と強調するのは、体重で上回る相手に当たり勝つべく「いかに速く高い姿勢から低い姿勢になるか」をはじめとした意識、技術を植え付けたいからだ。

 たとえ質量に劣っていても肉弾戦を制することは可能だし、制するべきだと断言する。
 
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