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ラグビー

「身体が重くなる感覚は少なくなった」小柄なラグビー日本代表SHが激しい肉弾戦でのクオリティを高めるために見つけ出した答えとは?

向風見也

2024.03.20

日本代表としてW杯にも出場した齋藤。さらなる進化に向けた取り組みも始めている。(C) Getty Images

日本代表としてW杯にも出場した齋藤。さらなる進化に向けた取り組みも始めている。(C) Getty Images

 残り1分で勝ち越された。

 32―38。6点差だ。

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 リスタートからノーミスで攻め、1トライ1ゴールを決めるのが白星の条件となった。

 東京サントリーサンゴリアスの齋藤直人は、やるべきことを明確にしていた。

「どうやってボールキープをするかと、どうやってアドバンテージもらうか。それだけを考えてやりました」

 3月16日。3万人超が集う愛知・豊田スタジアムで挑んでいたのは、ジャパンラグビーリーグワン1部の第10節だった。

 ホストのトヨタヴェルブリッツを向こうに、最後の自軍キックオフを確保した。突進役に球を預け、また別な突進役にパス。ショートサイドと呼ばれるタッチライン際の区画と、その内側でラックを連取した。

 本来はハイテンポなさばきが得意なスクラムハーフだが、この時ばかりは速さにこだわらなかった。

 敵陣のゴールラインへ達するまで楕円の宝物を抱えるのが必須で、かつ、相手の反則を引き出して攻め続ける「アドバンテージ」の状態に持ち込めればなおよかった。「アドバンテージ」をもらえば、その後に流れが滞っても当該の位置からプレーし直せる。

 落ち着いて適所へボールを配する裏には、苦い記憶がある。昨年7月22日に日本代表として臨んだサモア代表戦では、終盤に22―24と2点ビハインドを覆せず惜敗した。

「僕がアドバンテージをもらえていれば…みたいなことがあり、学んだんです。時間帯、点差、どう進めていくかを」

 経験を実力に昇華させる26歳が豊田で「アドバンテージ」をもらったのは、8フェーズ目のことだ。向こうのひとりが危険なタックルを放ち、イエローカードでフィールドを去った。サンゴリアスはペナルティーキックを奥側へ蹴り込み、トライラインに近づいた。

 ロスタイム85分。ゴールポストからやや左に到達。自軍スクラムの脇を、齋藤が抜けた。37―38。大歓声のなかでコンバージョンゴールも決まった。39―38。

 プレーオフ進出をかけた4強争いが熾烈をきわめるなか、勝ち点の総数を「38」にした。12チーム中3位を保った。

「諦めずにやるところは、チームのカルチャーでもある」

 身長165センチ、体重73キロ。国際戦士としては、昨秋にフランスでワールドカップへ初出場している。

 27年のオーストラリア大会へ再出発した新体制の日本代表へも「選ばれたいですし、そこで必要とされる選手になりたい」。一介のアスリートとして日々、研鑽する。

「自分が成長するために必要なことは? 何が足りないのか? それに対してどうするか? …ずっと言っているんですけど、それが大事で」
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