ラグビー

日本代表デビューが迫るリーグワンの最多トライゲッター、マロ・ツイタマが進むと決めた茨の道

向風見也

2024.05.21

5月の代表候補合宿にも参加するマロ・ツイタマ。新たな日本の戦力となるか。写真提供:リーグワン

 キャップをかぶっていた。「YAMAHA」。書かれていた文字は、所属する静岡ブルーレヴズの前身クラブを持つ企業の名前だった。

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 ゴールデンウイークの只中。磐田市内のクラブハウス内のインタビュー現場で、マロ・ツイタマは笑った。
 
「たまたまロッカールームにあったのをかぶってきたんです」

 身長182センチ、体重91キロの28歳は、来日5シーズン目にあってタイトルホルダーとなった。取材時には進行中だった今季のリーグワン1部で、15度、インゴールを割り、トップリーグ時代の2020年度(2021年)以来となる最多トライゲッターとなったのだ。

 チームは、元日本代表チームディレクターの藤井雄一郎新監督がオープンスタイルを提唱。「企業秘密」の独創的な陣形を作り、防御を引き寄せて短く動かすティップオンパス、立ったまま繋ぐオフロードパスを交える。フィールドの右中間、左中間に数的優位を作り、端側のウイングを務めるツイタマがフリーで球を預かる。独自の型をスコアへ変える。

「自分たちのスタイルを信用して、それを毎日、毎日、練習して、チームとして成長できるよう意識してきました」

 タッチライン際を力強く走り切ってスコアを奪うだけでなく、攻撃ラインの起点に入ってパスもさばける。仕留め役でありチャンスメーカー。広範囲で働けるのも強みだ。

「自分がどこのレベルまで行きたいのかについては、そこまで考えられていないです。意識するのは毎シーズン、毎試合、成長し続けること、自分のゲーム、スキルをよくすることです」

 サモアにルーツを持ち、かつての拠点だったニュージーランドではウェリントン代表として地域別選手権に出た。それでも、国際リーグのスーパーラグビーのクラブで安定的な契約を得るのが難しかった。意を決した。2019年に来日した。

 前身のヤマハ発動機ジュビロに入った頃から、大志を抱いていた。日本代表入りだ。

 いまルーツを持たない国で代表資格を得るには、当該の場所で5年以上続けて過ごさなくてはならない。その間、一時帰国できるタイミングは極端に限られる。近年は日本代表を目指す海外出身者が増えているが、すでにその権利を得た選手のひとりは「それ(権利を得て、かつ代表でプレーすること)がどれだけ大変か、わかっているのかな」と漏らすほどだ。
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「その瞬間、瞬間で、自分ができることをしっかりとできるようにしたい」