格闘技・プロレス

「体ができていない。上げる選択肢は今はない」早期のフェザー級転向を否定した井上尚弥。スーパーバンタムで示すモンスターの”進化”

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2024.07.18

井上は9月にドヘニーとの防衛戦が決定した。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 7月16日、プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が都内で記者会見発表に出席し、9月3日に東京・有明アリーナで元IBF同級王者テレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)と2度目の防衛戦を行なうと正式発表した。

 モンスターの次なるターゲットが決まった。去る5月6日、井上はボクシング興行として34年ぶりに開催された東京ドームで元世界2階級制覇のルイス・ネリ(メキシコ)を6回TKOで撃破し、4団体のベルト防衛に成功した。無敵の日本人ファイターは老練なテクニックを持つドヘニーの印象を問われると、「試合を通して実力を発揮する選手」と評す。元世界王者の実力を警戒しつつも、「一発も触れさせないという気持ちで、自分のボクシングを展開したい」と強気な一面を見せ、タイトル防衛に自信を示した。

 当初の相手はネリ戦直後にリングに上がったIBF、WBO世界同級1位のサム・グッドマン(オーストラリア)との対戦が有力視されていたが、交渉が暗礁に乗り上げた。そして、グッドマン側が7月に母国で次戦を行なうことが決まり、9月を希望していた井上と対戦する可能性が事実上消滅。その結果、直近3試合連続で大橋ジム興行で来日し、昨年6月には中嶋一輝(大橋)を下すなど3勝2KOと日本人と抜群の相性を誇り、ネリ戦のリザーバーとしても待機していたドヘニーと拳を交えることで落ち着いた。
 
 一部海外メディアでは全盛期を過ぎた37歳のボクサーとの対戦に疑問符がついているが、そういった外野の声に対して「このスーパーバンタム級でまだやるのであれば、いつかこういう試合は絶対来てしまう」と冷静に受け止める。

 井上は「今回ドヘニーに勝って、次はグッドマンなのか、(ムロジョン・)アフマダリエフなのかは、まだ全然話に出てこない」と話したうえで、「そういう状況だからといって、体ができていないのに階級を上げる選択肢は今はない。(Sバンタム級を)約2年と決めたなかで、今回はドヘニー。そこは全力でこなしていかないといけない」とフェザー級の早期転向を否定。モチベーションの低下や気の緩みが一切ないことを強調した。

 続けて、「今は周りの期待や、スーパーバンタム級でやる楽しさなどが加わっているので、そこは心配ない」と答え、しばらくは現階級を主戦に闘っていくことをあらためて示す。「プラスもマイナスもいろんな要素が含みますけど、自分の中では一戦一戦同じぐらいに仕上げないといけない気持ちで挑まなきゃいけない」と表情を引き締めた。

 東京ドームという大舞台を経験し、一段と王者の風格を増した井上。モンスターの進化に引き続き注目だ。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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