ラグビー

「今回は、決めろよ」恩師の激励を受けた遅咲きの日本代表スクラムハーフが故郷凱旋で初スタメン! 記念すべき一戦で小山大輝は何を感じたか?

向風見也

2024.07.25

スクラムハーフの小山が地元・北海道で代表初スタメンを飾った。(C) JRFU

 29歳でチャンスを得た。

 ラグビー日本代表の小山大輝が7月21日、札幌ドームでのイタリア代表戦に先発する。

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 身長171センチ、体重74キロで働き場はスクラムハーフ。際立つ走力をサイドアタック、カバー防御、キックを狙う相手への圧力に変える。
 
 13日には、過去に代表へ招かれた時に掴めなかったキャップ(代表戦出場の証)を獲得していた。

 このほど初めてナショナルチームのスターターを担う心境を、本番前日に明かしていた。

「北海道に代表として戻って来られて、すごく嬉しいです」

 そう。今度は、地元凱旋の機会でもあった。

 現在、小樽潮陵高校に勤める成田正人が後の代表プレーヤーと出会ったのは、芦別高の教師だった2008年だ。指導するラグビー部のグラウンドへ、所属部員のひとりが連れてきた4歳下の弟。それが小山だった。

 他校との練習ゲームへ、この小学4年生が混ざったことがあった。

 成田は先方に「こいつ、小学生だから」と安全面を考慮してもらうよう頼んだうえで、タッチライン際のウイングとして少年を出した。

 すると、素人であるはずの子どもが「クロス」を決めた。外側から中央へ鋭角に駆け込む、経験者が教わってできる類の動きで防御を破ったのだ。

 わずかな隙間をえぐるその嗅覚に、成田は「ただものではない」と直感。「お世辞」も交え「お前は将来、絶対に日本代表になる。ラグビーをやれ」。小山は中学で野球部に入ったが、その引退試合の会場にも成田はいた。

「明日からは、ラグビーだぞ」

 高校入学前にチームに加わった小山は、他校を交えた合同夏合宿での山走りで断トツのトップだった。少人数のクラブにあって、進学してすぐに主戦級となった。

 最終学年時は主将を務めた。全国大会予選は南北海道1回戦敗退も、高校日本代表の候補合宿で好タックルを連発。スクラムハーフで「当確」と見られた2人のうちひとりを追い越し、2枠以内に滑り込んだ。落選者も現在、国内リーグワンでプレーしているのだから、メンバーとなった小山の力が窺える。

 近所にラグビースクールやラグビー部のある中学がないこともあり、芦別高校のラグビー部は経験者を集めづらかった。いつも部員は、大会に単独で出られるぎりぎりの人数だった。

 そこにいた指導者の情熱によって、才能は、世に出た。
 
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「田舎の芦別から代表になって、皆に元気を与えられたらなと思っています」