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格闘技・プロレス

「人生、負けてから這い上がるんです」幾多の敗北を乗り越えてきた神取忍が『還暦祭り』で示した“限界を作らない”生き方

橋本宗洋

2024.12.01

還暦を迎えた神取忍だが、向上心は衰えていない。写真:橋本宗洋

還暦を迎えた神取忍だが、向上心は衰えていない。写真:橋本宗洋

 11月18日、TDCホールで開催された『神取忍還暦祭り~人生もう一度、これから真向勝負』は、大会名通りの“祭り”だった。

 柔道の全日本王者から女子プロレスの世界でも北斗晶戦をはじめ数々の名勝負を残してきた神取。ビッグネーム中のビッグネーム、いわばレジェンドだけにゲストも豪華だった。

【画像】『神取忍還暦祭り』女子プロレス界を代表する顔ぶれが集結! 世代を超えた対決が話題に
 和太鼓のパフォーマンスから始まり試合と試合の間には神取の友人でもある人気アーティストが登場。氣志團の綾小路翔が『One Night Carnival』を、嶋大輔が『男の勲章』を、さらにブラザー・コーンが『WON’T BE LONG』を歌う。メインのリングアナはSHOW-YAの寺田恵子。

 マッチメイクも“極悪女王”ダンプ松本の登場など多彩なものに。メインイベントでは神取が水波綾、梅咲遥とチームを結成。対戦したのは堀田祐美子、なつぽい、中森華子。全員が現在の女子プロレス界を代表する顔ぶれであり、神取となつぽいの顔合わせなど新鮮なマッチメイクでもあった。

 還暦ということでコスチュームは全身赤。得意のワキ固めやスイングスリーパーを決める場面もあり、場内のムードとしては「あとは神取が勝つだけ。どんなフィニッシュで記念大会を締めるか」といったものになっていた。

 ところが、結果は神取のフォール負け。中森に一瞬の隙を突かれ、丸め込みで3カウントを奪われてしまった。あまりにも意外な結末だ。それでも、神取はマイクを握ると観客に笑顔を見せた。

「負けちゃいました。でも人生、負けてから這い上がるんです。これまでもデビュー前から大場所、全部負けてます。みなさんも負けたっていい、そこから起き上がってください。60? 還暦? 関係ないです。気持ちさえあれば上に向かっていけるんです」

 リングで圧倒的な“強さ”を示したきた神取だが、決して“無敵”ではない。伝説の北斗晶戦、神取自身も「あれが自分のベストバウト」だと語るブル中野とのチェーンデスマッチ、いずれも敗れている。天龍源一郎に顔面をボコボコにされた試合を覚えているファンも多いはずだ。

 そうした敗北を乗り越えて、神取は今もリングに立つ。還暦だということは、言われなければ意識しないほどだそうだ。これまでもこれからも、いい意味でノープラン。自分で限界を作ることはない。

「自分の中では道がないところに道を作っていくっていうのがプロレスだと思ってるから」

 あくまでも現役プロレスラー。この大会も祭りであると同時に、現在進行形の闘いだった。第1試合では神取率いるLLPW-Xから新人のひなた乃彩がデビュー。またセミファイナルでは、同じくLLPW-Xの“二刀流ファイター”NØRIがマリーゴールドのビクトリア弓月に勝利している。マリーゴールドのリーグ戦から始まったライバルストーリーだ。

「たくさんの方々のおかげでLLPW-X、そして女子プロレス界が盛り上がっています。これを機会にまたよろしくお願いします」

 観客たちにそう語りかけた神取。業界全体の現在、そして未来をも見据えていたことこそ『還暦祭り』の重要なポイントだった。

取材・文●橋本宗洋

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