フィギュア

一発勝負ゆえ混沌した結果になった男子シングル。有力選手にミスが続出した代表選考会の行方【フィギュア全日本選手権】

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2024.12.22

左から中田、鍵山、壷井がメダルを獲得した。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 頂上決戦ゆえの"魔物"が大きく影響を与える結果となった。

 12月21日、フィギュアスケートの全日本選手権(大阪・東和薬品ラクタブドーム)は男子フリーが行なわれ、2022年北京五輪銀メダリストの鍵山優真が合計297.73点をマークし、悲願の日本一を初めて掴んだ。2位にはジュニアカテゴリーの16歳・中田璃士がフリー173.68点を記録し、総合2位に入った。新世代が躍動した一方で、有力選手が相次いでミスを連発する姿が目立った。

 ショート首位、最終滑走という極限のプレッシャーがかかるなかで21歳の若武者は堂々した演技を披露した。冒頭の4回転フリップ、2つ目の4回転サルコウは高さと幅のある美しいジャンプでGOE(技の出来栄え点)も大きく加点した。後半は少しバランスを崩したが、それでも安定感あるスケーティングで他を圧倒した。演技後は氷上で大の字になって倒れ、大歓声を一身に浴びた鍵山は「1回(宇野)昌磨さんのを見て、最終滑走でいい演技をしたら、ちょっとやってみたかった」と明かした。直前には16歳の中田が完璧な演技をみせ、派手な大の字パフォーマンスを先にされてしまったが、「やってみたかったのでやってみました」と続け、初タイトルの喜びを嚙みしめた。
 
 その裏で、ジュニア時代から切磋琢磨する盟友たちは苦戦した。昨年の世界選手権代表で、ショート4位だった三浦佳生は序盤からジャンプミスを続出。後半は4回転+3回転の連続トウループなどを降りる意地を見せたがフリー9位(141.22点)、総合8位と振るわなかった。ミックスゾーンでは「スケートって難しいなと感じさせられる4分間だった。自分の力不足を感じました」と答え、「今までの全日本と空気が違う感覚があった。みんな優勝したいって思いが強くあったと思うので、自分も含めてちょっと空回りしちゃったのかな」と、全日本独特の雰囲気をそう表現した。

 鍵山とともに今月フランス・グルノーブルで開催されたグランプリ(GP)ファイナルに出場した佐藤駿も苦戦したひとりだ。今季のGPシリーズで確実に成績を残し、絶好調だった冒頭の4回転ルッツでまさかの転倒スタート。以降もジャンプでミスが相次ぎ散々な結果に。演技後は茫然自失といった表情で頭を抱えてうつむき、そのあと過呼吸で医務室に運ばれて取材に応じられなかった。
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「まずいかなと正直思う」「しっかりアピールできていないとダメ」