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「僕は大丈夫」全日本フィギュアFS後、過呼吸で医務室搬送の佐藤駿が経緯を説明。「あまり覚えていない」と切り出した“魔物”の正体

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2024.12.23

佐藤はFS後、過呼吸で医務室に運ばれた。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 12月23日、来年3月に開催される世界選手権(米国・ボストン)の日本代表に選出された佐藤駿が記者会見に出席した。会見後に囲み取材に応じ、フリー後に医務室に直行した経緯をあらためて説明した。

 初優勝を目指した舞台で信じられない"異変"が起きた。21日に行なわれた男子フリーで佐藤は得意の4回転ルッツで転倒。その後もジャンプでのミスが相次ぎ、演技後は頭を抱えてうつむいた。そのあと、本来ならミックスゾーンで取材に応じる予定が過呼吸になってしまい、佐藤は医務室に運ばれてインタビューに答えられる状況ではなかった。

 この日、元気な姿で会見場に姿を見せた佐藤は「ファンの皆さんにも心配をかけて申し訳ないと思っているけど、僕は大丈夫です」と笑顔を見せた。吉報はホテルの自室にいて、「携帯を開いては閉じてを繰り返していた。結果が出てからは本当にすごく嬉しい気持ちがいっぱいだった」と声を弾ませた。

 当時の状況について佐藤は「あまり覚えていない」と切り出し、「更衣室付近で悔しさだったりとか、試合に出場する前にフリーの前にちょっと恐怖心を抱いてしまった。それから解放されたというわけじゃないけど、安心感だったり、いろんな感情から倒れ込んでしまった」と説明。気づいた時には「2時間ぐらい経っていた」と衝撃的な1日を振り返った。
 
 応急処置をしてくれた周りのスタッフやドクター、コーチ陣に感謝の言葉を述べながら「今大会は楽しく終わりたいと思っていましたけど、やはりそれが演技に出せない、出し切ることができなかった悔しさがあった。ショートの失敗で動揺してしまったのもあって、それをフリーまで引きずってしまったことがひとつの要因になっているのかな」と、全日本特有ともいえる魔物のようなプレッシャーに押しつぶされ、本来のパフォーマンスを発揮できなかったと分析。「自分のここぞ、というところで決めきるところが力不足だった」と痛感した。

 今季は全日本初優勝を果たしたジュニア時代からの盟友である鍵山優真とともにグランプリファイナルに進出するなど、シーズン前半戦での好成績を評価され、世界選手権の切符を初めて手にした。「自分がここまで懸けてきた試合っていうのは、本当に自分にとって大きな一歩になるかと感じています。もちろん結果(※総合7位。合計=230.80点、フリー=148.90点)は良くなかったですけど、このリベンジを果たす舞台というのは、このあとの試合も多くあると思うので。その試合で今大会の悔しさというか、そういったものをぶつけていきたい」と言葉に力を込めた。

 2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の国・地域別出場枠が懸かる世界選手権は、世界のトップスケーターが集結するため、今大会以上に熾烈な戦いとなるのは間違いない。苦い経験を糧にするため、20歳の若きスケーターはこの日再び闘志に火を灯した。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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