決戦間近だ。

　プロボクシングの世界スーパーバンタム級４団体統一戦（東京・有明アリーナ）が１月24日に行なわれる。同23日には王者・井上尚弥と、代役挑戦者のWBO同級11位キム・イェジュン（韓国）が前日計量に臨み、ともにリミットより100グラム軽い55.2キロで一発クリアした。延期、対戦相手変更など二転三転した波乱の興行は、いよいよ勝負のゴングを迎える。
【画像】井上尚弥ら全選手が計量パス！有明でのタイトルマッチに向けた前日計量の様子をお届け！

　全選手の計量終了後、報道陣の囲み取材に応じた大橋ジムの大橋秀行会長は、「今まで世界戦は50試合以上やっているんですけど、ここまで来るのに一番苦しい興行だった」と本音を漏らし、主催者として安堵の表情を浮かべた。

　無理もない。当初は昨年12月24日にIBF、WBO同級１位のサム・グッドマン（オーストラリア）と試合を開催する予定だったが、同選手が母国での最終スパーリング中に左目上をカット。予期せぬアクシデントにより、興行自体が１か月の延期を発表した。

　さらに不測の事態は続いた。今月11日、グッドマンが練習中に再び左目上を裂傷し、全治約６か月の重傷を負い、試合を断念した。大橋会長はすぐに代役挑戦者として世界初挑戦となるキム・イェジュンに変更させ、興行消滅という最悪の事態を回避。トラブルの連続で冷や汗をかいたが、なんとか試合開催にこぎ着けた。
  　思いもしない形で実現した日韓決戦。大橋会長は井上の韓国での人気は高く、今回の試合は韓国の方でも注目度がグンと上がっており、テレビの生中継も決定している。「以前に尚弥が韓国を訪れた時に、韓流スターが『井上に会いたい』と言ってきた。日本でいうキムタクみたいな人」と証言するほど、隣国でもモンスターの人気は沸騰しているという。「いい試合になれば、また（韓国の）ボクシング界が強くなるキッカケになるんじゃないかな」と韓国のボクシング復興の起爆剤として期待を込めつつも、「大橋ジムの会長としては（井上に）圧倒してほしい」と複雑な心境をのぞかせ、愛弟子の勝利を願った。

　キャリア初の韓国人ボクサーとの対戦になる井上は、「代役として受けてくれて、気持ちは強いと感じる。諦めることなく向かってきてくれるんじゃないかな」と待ちに待たされた２か月ぶりの試合に向け、気持ちを高ぶらせていた井上。2025年の初陣を圧倒的な強さで相手をねじ伏せ、海外ビッグマッチ進出への足がかりをつける。

取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）

井上尚弥がグッドマンに送った〝リスペクト〟　再裂傷に「どういう対策を練ってたのかな」と疑問視も「しっかりしたトレーニングをして挑んできた」

「選手によっては対応しきれない」日韓決戦に臨む井上尚弥が２度の試合中止、10日前に対戦相手急きょ変更で得た絶対王者の“境地”

「KOするのが希望だ」４団体統一王者・井上尚弥を前に挑戦者キム・イェジュンが大胆発言「１ラウンド目から全力を尽くして」と〝要求〟も