格闘技・プロレス

「これがデスマッチの力です!」年間ベストバウト候補に推したい『CRAZY FEST』メインイベントの熱狂ぶり

橋本宗洋

2025.03.13

メインイベントは「生きて帰るまでがデスマッチ」がモットーの葛西純(奥)が勝利を収めた。写真:橋本宗洋

 リングサイドで撮影していると、あまりの熱気で酸欠になりそうだった。

【画像】新日本の歴史を作ってきたレジェンドレスラーたちが集結
 3月10日、後楽園ホールで開催されたのはデスマッチの祭典『CRAZY FEST』。さまざまな団体で試合をさばき、特にデスマッチのレフェリーとして名高いバーブ佐々木の25周年自主興行だ。
 

 チケットが一瞬で完売となった本大会。新日本プロレスの高橋ヒロムが植木嵩行と組んでバラモン兄弟と対戦するなど期待を超える対戦カードと内容に、超満員札止め1612人の観衆は第0試合から熱狂した。酸欠も当然の盛り上がりだ。

 セミファイナルでは、アメリカのGCWでデスマッチ王座を(男子と闘って)長期保持してきたことでも知られる山下りなが鈴季すずとノーDQ(反則裁定なし)のTLCマッチで対戦した。スターダムに所属するすずだが、もともとデスマッチがやりたくてプロレスラーになった選手だ。アイスリボン所属時代にハードコア七番勝負、プロミネンス時代にはデスマッチ十番勝負も経験している。

 結果は山下勝利だったが、すずにも大喝采。その狂気性、リミッターを振り切った闘いぶりで会場の熱狂度をさらに上げたセミファイナルに続き、メインイベントは異色かつ最高の顔合わせに。

"デスマッチのカリスマ"葛西純、"クレイジーキッド"竹田誠志という日本を代表する(そして世界トップの)デスマッチファイターに加え、新日本プロレスからIWGPジュニアヘビー級王者のエル・デスペラードが登場。3wayでの対戦は、デスペラードにとって日本では初の蛍光灯&ガラスボードデスマッチとして行なわれた。

 以前からデスマッチファイターにリスペクトを表し、両者とも対戦しているデスペラード。しかし今回は気持ちを新たにしての一戦だったはずだ。

 2022年、葛西とデスマッチでの初シングルで勝利したデスペラードは、戦前「死んでもいい覚悟」を口にした。葛西はその言葉に対し、試合後にこう返している。

「生きていたいのに死んじまうヤツがゴマンといるんだ。オレたちは大怪我しても、死んでもおかしくねえリングに上がってるからこそ、生きてリングを降りなきゃいけねえんだ」

 葛西のモットーは"生きて帰るまでがデスマッチ"。今回のデスペラードは、死ぬ覚悟ではなく生き残るためにリングに上がった。ただ葛西と竹田を相手にして生き残るのは、生半可なことではない。
 
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見るものに生きる力を与える。それがデスマッチだ