格闘技・プロレス

今こそプロレスファンに見てほしい橋本大地。“橋本真也の息子”だけでは語れない“大人”のレスラーとしての魅力

橋本宗洋

2025.05.14

大日本プロレスに所属する橋本大地。3度目の戴冠を果たした。写真:橋本宗洋

 何を今さらと言われるかもしれないが、プロレスファンに広く見てほしい選手がいる。大日本プロレスの橋本大地だ。

 2011年3月にZERO1でデビューしてから14年。現在33歳の彼は5月5日の大日本プロレス横浜武道館大会でストロングヘビー級王座を獲得した。これが3度目の戴冠で、対戦したのはタッグパートナーでもある神谷英慶だ。

【画像】新日本の歴史を作ってきたレジェンドレスラーたちが集結
 規格外のパワーを誇る神谷は、通常ルールのストロングヘビー級だけでなくデスマッチヘビー級タイトルも最近まで保持していた。今回はそんな神谷が大地を指名してタイトルマッチが実現している。

 ストロング部門の闘いはシンプルかつパワフル、ゴツゴツとした肉体のぶつかり合いが真骨頂だ。今回、とりわけ目立ったのは神谷が見せた腰への集中攻撃。トップ同士の対戦で逆エビ固めがフィニッシュへの重要な技となる、そんな展開こそ大日本プロレスだと言っていい。

 大地はSTFで反撃。デビュー戦で胸を借りた蝶野正洋から受け継いだ技を、彼は今も大事に使っている。そこから、キャリアの中で大きな影響を受けたという佐藤耕平のフィニッシャー、パイルドライバーを決めた大地。最後は自身の必殺技ライジングDDTで3カウントを奪った。

 試合後のインタビュースペース。3度目の戴冠でどんな王者になりたいかと聞かれて、大地は言った。

「確か1回目に掲げたテーマが"強さとは何か"で、2回目が"チャンピオンとは何か"。その2つを兼ね備えた上で、今回は"大日本の象徴とは何か"じゃないかな」

 単なるチャンピオンではなく、単なるトップでもなく、団体を象徴する存在として何を見せるか。4月からは佐賀の団体BURSTとの2団体所属となり、個人としても新たなキャリアを構築していく。

 今回のタイトルマッチは「純粋に競い合えるのはこれが最後」との2人の思いから決まったもの。団体の"顔"を先輩の関本大介にだけ任せるわけにはいかないし、若手の突き上げも激しくなってきた。リーグ戦「一騎当千」の復活も、若手の主張から決まった。

 新たな動きを「頼もしいよ」と大地は言う。その一方で、自分や神谷は伸びてくる選手を迎え撃ち、なおかつ興行的にも挽回していかなくてはいけない。

 今の大日本プロレスは観客動員で苦戦が続いている。引退や退団を選んだ選手も。大地も「客が入ってない」と明言しており、"象徴"としての責任感も強くなる。
NEXT
PAGE
「俺の信念は、楽しんでプロレスをすることだから。楽しくないことも全力で楽しんでこそ」