34年ぶりに東京で開幕する世界陸上の代表選考を兼ねた「第109回日本選手権」が7月4日から6日まで開催された。国立競技場を舞台に繰り広げた熱戦を連日取材した『THE DIGEST』では世界最高峰の舞台で活躍が期待される選手の“言葉”にスポットを当てる。今回は男子100メートル決勝で5年ぶりの優勝を果たした桐生祥秀を取り上げる。
【画像】熱戦が繰り広げられた陸上日本選手権大会第2日を厳選ショットで特集!
「(陸上を)やっていて良かったな」
29歳のベテランランナーが心の底から本音を漏らした。2020年の日本選手権以来、実に5年ぶり3度目の戴冠だった。「やっぱ優勝は嬉しい。今回、久々に...あの時から入賞はするけど、メダルに食い込めなかったり、なんか悔しいなと思ったりすることが続いていたので...」と嬉しさを噛みしめるようにゴールフィニッシュの瞬間を振り返った。
今大会は予選から波乱が続出した。日本歴代2位(9秒96)の自己ベストを持つサニブラウン・アブデル・ハキームが右股関節の骨挫傷を押して強行出場もタイムを伸ばせず準決勝に進めなかった。また10秒02の自己ベストを持ち、今季好調をキープしていた栁田大輝(東洋大)はまさかのフライング失格。優勝候補2人が早々と姿を消した。
他にも連覇を狙った坂井隆一郎、日本記録保持者の山縣亮太らしのぎを削ってきた多くのライバルが準決勝で敗れた。「どんなに速くても、予選や準決勝でミスしたら勝負ができない。そこを今回はしっかりと踏めたことが勝因かな」と、百戦錬磨のベテランは言い切った。
ゴール後は歓喜の雄叫びを上げ、勝利インタビューでは涙を流す場面があった。取材ゾーンで、「この喜びを誰に一番伝えたいか?」との問いに桐生は「家族と言いたいところだけど」と笑いながら、大学生のころから見てもらっている小島茂之コーチと後藤勤トレーナーを挙げる。「辛いときもずっと“桐生ならいける!”という言葉をかけてもらってきていたので。今日はコーチとトレーナーの日かな」と、チーム・桐生にこう感謝を伝える。
「泣くつもりはなかったけど、トレーナーとかの涙を見て、ウルっときてしまった部分もあるが(笑い)僕は、中学校から陸上をやっていて、いつもカメラの前では悔し涙しか流せていなかった。いろいろな大会でも...東京オリンピックにしても、いろいろな大会で泣いて、『次、頑張ります』と言ってきた。もちろん今日はゴールではないが、でも、嬉しくて泣いたことは、自分のなかで、ひとつ良かったなと思う機会となった」
5年ぶりに日本一の座を奪還した桐生だが、日本代表の座を手にするための挑戦はまだ続く。「(ワールドランキングの)ポイントも、タイム(参加標準記録10秒00)も切っていないので、ここからはどちらも狙っていく」と、世界陸上の代表入りに意気込む。
日本人初9秒台スプリンターの世界陸上選考“第2ラウンド”に注目だ。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
【画像】熱戦が繰り広げられた陸上日本選手権大会第3日を厳選ショットで特集!
【画像】熱戦が繰り広げられた陸上日本選手権大会第1日を厳選ショットで特集!
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「(陸上を)やっていて良かったな」
29歳のベテランランナーが心の底から本音を漏らした。2020年の日本選手権以来、実に5年ぶり3度目の戴冠だった。「やっぱ優勝は嬉しい。今回、久々に...あの時から入賞はするけど、メダルに食い込めなかったり、なんか悔しいなと思ったりすることが続いていたので...」と嬉しさを噛みしめるようにゴールフィニッシュの瞬間を振り返った。
今大会は予選から波乱が続出した。日本歴代2位(9秒96)の自己ベストを持つサニブラウン・アブデル・ハキームが右股関節の骨挫傷を押して強行出場もタイムを伸ばせず準決勝に進めなかった。また10秒02の自己ベストを持ち、今季好調をキープしていた栁田大輝(東洋大)はまさかのフライング失格。優勝候補2人が早々と姿を消した。
他にも連覇を狙った坂井隆一郎、日本記録保持者の山縣亮太らしのぎを削ってきた多くのライバルが準決勝で敗れた。「どんなに速くても、予選や準決勝でミスしたら勝負ができない。そこを今回はしっかりと踏めたことが勝因かな」と、百戦錬磨のベテランは言い切った。
ゴール後は歓喜の雄叫びを上げ、勝利インタビューでは涙を流す場面があった。取材ゾーンで、「この喜びを誰に一番伝えたいか?」との問いに桐生は「家族と言いたいところだけど」と笑いながら、大学生のころから見てもらっている小島茂之コーチと後藤勤トレーナーを挙げる。「辛いときもずっと“桐生ならいける!”という言葉をかけてもらってきていたので。今日はコーチとトレーナーの日かな」と、チーム・桐生にこう感謝を伝える。
「泣くつもりはなかったけど、トレーナーとかの涙を見て、ウルっときてしまった部分もあるが(笑い)僕は、中学校から陸上をやっていて、いつもカメラの前では悔し涙しか流せていなかった。いろいろな大会でも...東京オリンピックにしても、いろいろな大会で泣いて、『次、頑張ります』と言ってきた。もちろん今日はゴールではないが、でも、嬉しくて泣いたことは、自分のなかで、ひとつ良かったなと思う機会となった」
5年ぶりに日本一の座を奪還した桐生だが、日本代表の座を手にするための挑戦はまだ続く。「(ワールドランキングの)ポイントも、タイム(参加標準記録10秒00)も切っていないので、ここからはどちらも狙っていく」と、世界陸上の代表入りに意気込む。
日本人初9秒台スプリンターの世界陸上選考“第2ラウンド”に注目だ。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
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