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食と体調管理

「多くの人にサポートされながらなんとか取ったオリンピック」競歩元日本代表・荒井広宙が挑み続けた競技生活と日々を支えた食習慣

矢内由美子

2025.09.01

写真:GettyImages

写真:GettyImages

―そして悲願の2016年リオ五輪出場。代表に決まった時の気持ちはいかがでいたか?

 前年の2015年にあった世界選手権で4位に初入賞したのですが、当時同じく自衛隊に所属していた谷井孝行さんが銅メダルを獲得したのでその時点でリオ五輪代表に内定。私がリオ五輪に出るためには選考会でもう一度勝たないといけないですし、初入賞の喜び半分悔しさ半分という状況でした。

 また、2015年11月に母親が亡くなって精神的なダメージが計り知れなく、リオ五輪選考会までは体調を崩すなど浮き沈みが激しかったです。そういう中で多くの人にサポートされながらなんとか取ったオリンピックの代表権。代表に決まってからの準備期間はケガすることなく、計画通りに練習を勧められ、その年のベストの状態でリオ五輪のスタートラインに立てました。

―本番では途中でペースを上げた上位の選手に惑わされることなく自分のペースを貫きました。そして3番手でフィニッシュ。ゴールした直後は他選手との接触で失格というアナウンスでしたが、日本チームの異議申し立てにより判定が変わって銅メダルという結果になりました。判定を待っていた数時間はどんな気持ちでしたか?

 失格があったとしても自分のベースを貫いて歩き切ったという思いは強かったので、どちらの結果でも受け入れるという感じでしたね。オリンピックの重圧から解放されたという気持ちもありました。

―とはいえ着順通りの3位と確定した時は喜びも全然違ったのではないでしょうか。

 そうですね、気持ちが揺さぶられるものがあった中での3位だったのでとても嬉しかったです。
 
―リオ五輪翌年の2017年には世界選手権で銀メダルを獲得し、迎える東京五輪では表彰台の一番高いところを目指す日々になったと思います。目標が大きくなっていく中でプレッシャーとの闘いも増したのではないでしょうか。

 リオまでは挑戦者でしたが、リオでメダルを獲ってからはつねに結果を出さなければいけない立ち位置になってきたという変化を感じていました。そうした中で2019年に富士通に移籍したのは、2020年に予定されていた東京五輪に向けて足りないピースは何かと考え、日本陸連強化コーチであり、富士通に所属する今村文男さんに合宿を含めて毎日の練習を濃く見て貰いたいという思いがあったからでした。

―コロナ禍により2021年に延期されて行われた東京五輪。リオ五輪で日本人初メダルの輝いた荒井さんたちが引っ張って来た日本の競歩界は、選手層がどんどん厚くなっていました。

 東京五輪が決まった2013年を境に下の世代も育てようという機運が生まれ、ちょうど2018年、2019年ぐらいにジュニア時代から強化されてきた選手たちが一気に出てきました。私もそこでもう一歩レベルアップしていければ戦えたのかなと思うのですが、ケガもあってそれまで出来ていたトレーニングが出来なくなっていました。

―世界を見渡すと荒井さんより年上の選手もいる中で、2022年に引退された理由を教えていただけますでしょうか。

 以前であれば、30キロを3回ぐらい歩ければこれぐらいのタイムで歩けるというような自分の中の物差しがあったのですが、その物差しが全然合わなくなって来たのです。トレーニングをしても体の反応がない、効果がないという感じになってきました。それにケガも重なり、周りの選手の飛躍もあり、種目も50kmがなくなって35kmになり、スピード対応も必要になった。このままだらだらやっても、と思い、2022年4月にあったオレゴン世界選手権の選考会である日本選手権でダメなら区切りをつけようと決めました。

―荒井さんは競技人生の中で一度も歩形失格がなかったとお聞きします。失格が少なくない競技ですからすごいことだと思います。

 特別きれいな訳ではなく、フォームは中の上だったと思います。私はスピードや持久力も含めてバランス型でした。歩形が良くても遅かったら意味がない。トータルでバランスが良かったと思います。
 

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