そんな彼女に再び目標を与えたのは、葉月の姉の友理だろう。今年からソニーのキャプテンに就任した友理は、従来の中盤を省略しがちだった基本戦術を、ミッドフィルダーを経由し中から崩す構築型へと組み替えた。その戦術の要にはチームの一体化があり、さらにその先には、世界がある。
「新しい戦術に変えてから、ミッドフィルダーたちが明らかに楽しそうにプレーしてるんです」
守備の要であり、日本代表のキャプテンも努めた内藤夏紀も、笑顔でそう証言した。
7月下旬――日本女子ホッケー界の2強、ソニーとコカ・コーラレッドスパークスとの間で練習試合が行なわれた。談笑を交わす両チームの選手たちの多くは、本来なら今頃はチームメイトとして、東京オリンピックの舞台に立っていたはずだ。
そのような“あり得たはずのフィールド”に、心が捕らわれぬはずはない。それでも選手たちは今、目の前のフィールドだけを見ようとしている。
ホッケーのフィールドは、サッカーのそれより一回りほど小さいだけ。だが試合展開のスピード感は、バスケットボールのそれだ。
両チーム合わせ20名のフィールドプレーヤーたちが、常に全力で走り回る。ボールが空を切り激しく行き交う。三次元空間を用いて相手を抜き去るドリブル、ゴールに背を向けたまま放つシュート――洒脱な技巧の数々も、観る者の感嘆の声を誘う。
「ホッケーは観ても楽しいスポーツ。一度見てくれたら、好きになってもらえる自信はある」
以前、永井葉月が口にした言葉が、ふと胸に蘇った。
8月の中旬には、新たな日本代表メンバーの選考会が行なわれる。
凛とした桜たちは、百花繚乱の時に向け、蕾をつけはじめている。
文●内田暁
「新しい戦術に変えてから、ミッドフィルダーたちが明らかに楽しそうにプレーしてるんです」
守備の要であり、日本代表のキャプテンも努めた内藤夏紀も、笑顔でそう証言した。
7月下旬――日本女子ホッケー界の2強、ソニーとコカ・コーラレッドスパークスとの間で練習試合が行なわれた。談笑を交わす両チームの選手たちの多くは、本来なら今頃はチームメイトとして、東京オリンピックの舞台に立っていたはずだ。
そのような“あり得たはずのフィールド”に、心が捕らわれぬはずはない。それでも選手たちは今、目の前のフィールドだけを見ようとしている。
ホッケーのフィールドは、サッカーのそれより一回りほど小さいだけ。だが試合展開のスピード感は、バスケットボールのそれだ。
両チーム合わせ20名のフィールドプレーヤーたちが、常に全力で走り回る。ボールが空を切り激しく行き交う。三次元空間を用いて相手を抜き去るドリブル、ゴールに背を向けたまま放つシュート――洒脱な技巧の数々も、観る者の感嘆の声を誘う。
「ホッケーは観ても楽しいスポーツ。一度見てくれたら、好きになってもらえる自信はある」
以前、永井葉月が口にした言葉が、ふと胸に蘇った。
8月の中旬には、新たな日本代表メンバーの選考会が行なわれる。
凛とした桜たちは、百花繚乱の時に向け、蕾をつけはじめている。
文●内田暁