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フィギュア

羽生結弦がコロナ禍で培った“逆境を乗り越える力”。そして競技人生をかけて挑むクワッドアクセル

辛仁夏

2021.01.11

試合での達成感をつかみ、目指す次の目標は前人未到の“クワッドアクセル”だ。写真:森田直樹/アフロスポーツ

試合での達成感をつかみ、目指す次の目標は前人未到の“クワッドアクセル”だ。写真:森田直樹/アフロスポーツ

 試合でしか得られない達成感を、久しぶりにつかめた昨年の全日本選手権。競技会での優勝争いが向上心を生み、さらにクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への挑戦がいまの羽生の最大のモチベーションになっているという。

「いまの自分にとって一番大事なことは、4回転アクセルを跳ぶこと、そして、プログラム自体をどういう風に進化させて深めていくか」

 残りの競技人生での大きな目標となっているクワッドアクセルを世界の誰よりも早く成功させたいという羽生は率直にこんなことを口にした。

「夢物語じゃないかという感覚もある。4回転半という険しい壁、手すりとか何もないんじゃないかなというくらい高い壁。だけど、幻想のままにしたくない。絶対に自分の手でつかみ取ってその壁の先を見たい。それだけがいま、この世の中で自分がスケートをやれる理由かなと思っています」
 
 世界でまだ誰も試合で跳んだことがない前人未到のクワッドアクセルに挑んでいる羽生だが、「ものすごく衝撃がかかる」というその未知の大技は練習するだけでもリスクが高い。過去に大きなけがを負っている足首に負荷をかければ痛みが出るし、ほかのジャンプにも悪影響が出るという。そんな状態になっても、まだ練習でさえ一度も成功したことがないというが、羽生のチャレンジ精神に揺るぎはない。

「自分の経験をいろいろ生かし、やっとベテランらしくいろいろなトレーニングを積めるようになり、間違いなく全日本選手権で結果として表れた。4回転半のためのトレーニングを考えたとき、絶対に土台になると思います」

 コーチ不在の中で孤独に耐えながら練習を積み重ね、全日本選手権で結果を出した自信と手ごたえが、今後も競技を続けるパワーの源となり、クワッドアクセルを試合で成功させるという強い意欲の後押しになるに違いない。26歳の五輪王者には進むべき道がはっきりと見えている。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

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