専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
ゴルフ

上田桃子が打ち勝った“自分との戦い”。「カッコつけずにやれよ」と言われて訪れた変化とは?

山西英希

2021.05.03

 結果だけを見ればベテランの横綱相撲のようではあったが、この試合まで上田自身は自分との戦いに苦しんでいた。自分よりも年上の選手が少なくなり、自分の立ち位置に戸惑いがあったというのだ。

「若い時は猪突猛進じゃないけど、絶対に自分が一番になるんだと思っていました。ところが最近は泥臭くというよりどこか上手くやろうとしていたと思います」

 練習では量より質を求め、試合ではきれいなゴルフをしようとしていた。しかし、コーチを務める辻村明志氏から「カッコつけずにやれよ。今は勝負するんだという目になっていない」と指摘され、昔の自分を取り戻そうという気持ちになった。

 あえて前週の試合を休み、辻村コーチとミニキャンプを張り、基礎的な練習をみっちりと行なったのもそれが理由だ。

「100ヤード以下は10ヤード刻みで、アプローチは15ヤード以下を、パッティングは1・5メートルの距離を集中的に練習しました」といい、さらにドライバーショットではスイングリズムを、アイアンショットはクラブの入りや軌道を重視してボールを打ち続けた。その結果、風が吹き荒れた最終日でも自分のスイングやゴルフスタイルを崩すことなく、最後まで落ち着いてプレーできた。
 
 14年から辻村コーチに師事している上田だが、今では小祝さくらや吉田優利、永井花奈ら多くの若手が集結するようになった。その中では当然のようにリーダー的な存在のため、どこかで手本を見せなければという気持ちがあった。それがいつの間にか上田の持ち味を失わせていたのかもしれない。

 辻村コーチが指摘するように20代の上田には常に殺気立ったものがあったが、それを思い出したことが今回の優勝に結びついたとしたなら、今後も優勝を重ねるチャンスはある。むしろ、技術的には若いときよりも上がっているだけに、若手には大きな壁として存在感を示すことになるのではないか。

文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号