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ゴルフ

「見返したかった」渋野日向子の涙に込められた“複雑な想い”。亡き恩人への感謝、そして批判に対する本音も

山西英希

2021.10.11

 この日、18番のピン位置は右奥だったが、「バックスピンがかかるので、ピンの上2ヤードに落とせばカップインもあるかなと思って打ちました」と渋野。その狙いどおり、本戦ではピン上約1ヤードに落とし、ピン手前1メートルの位置まで戻す。

 プレーオフ1ホール目ではさらに精度を上げて、ピン上2ヤードに落とすと、ボールはバックスピンがかかってカップに向かっていく。惜しくも外れたが、約20センチ手前につけた。2ホール目こそ、ピン上5ヤードに落ちたため、1.5メートルの下りのパットが残ったが、どのショットもしっかりと計算されたショットだった。

「4本のウェッジを入れたおかげで、1ヤード、2ヤードを打ち分けることができたと思います」と語ったとおり、必死で練習してきたことが重要な場面で大きな武器となったのだ。
 
 優勝が決まった瞬間、思わず涙がこぼれ、両手で顔を覆った渋野。「勝てなかった2年間のことをいろいろ思い出しての涙です。これでいろんな人にいい報告ができるなと」。その中には、今年の4月に亡くなった前所属会社であるRSK山陽放送の社長を務めていた桑田茂氏も含まれる。高校時代からずっと笑顔で応援してくれていた恩人だった。

 支えてくれた周囲の人やファンに対して感謝の気持ちを届けるためにも優勝したかったが、自分の意地を見せたい気持ちもあった。メジャーである『AIG全英女子オープン』を制し、国内ツアーで4勝を挙げた19年は一躍時の人となったが、その後は米ツアーで結果を出せず、国内ツアーでも優勝に手が届かなかった。

 その間、自身のスイング改造についていろいろと言われていることも耳に入ってきた。「あーだこーだ言っていた人を見返したい気持ちを心に片隅に置きながらプレーしていました」と本音を漏らす。

 今回の優勝で、自分の選択が間違っていないことを証明できたことも嬉しかった。「一時は19年の自分を超えることはできないと思いましたが、今は2年前の自分よりも強くなれる感じがあります」と、この1勝がもたらす自信は計り知れないぐらいに大きい。終盤戦に向かう女子ツアーをまだまだ盛り上げてくれそうだ。

文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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