専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
ラグビー

3連覇を逃したオールブラックスは弱体化したのか。世界ラグビーにおける彼らの立ち位置に変化は?

齋藤龍太郎

2019.11.03

唯一の黒星となったイングランド戦は、完全に長所を消されていた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

唯一の黒星となったイングランド戦は、完全に長所を消されていた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 オールブラックスは数少ないチャンスを生かしたいところだったが、イングランドの強力で安定したセットプレー(スクラム、ラインアウト等)、そして素早く前に出るディフェンスの圧力に耐えきれず、マイボールにもかかわらずラインを大きく下げてしまう場面もしばしばあった。近年のオールブラックスにはほとんど見られなかった現象だ。

 相手のわずかなミスから一気にトライにつなげる得意のパターンも、イングランドの高いプレー精度の前にほとんど見せることができず、得点は後半17分、相手ボールラインアウトのスローイングのミスでFLアーディ・サヴェアが決めたトライとその後のゴールのみ。オールブラックスは7対19で敗れ、3連覇の夢は潰えた。

 スティーブ・ハンセンHCは試合後にこのように振り返った。

「半歩でも下がったら彼ら(イングランド)はその分攻め込んできた。今夜は我々の方が十分ではなかった」

 より具体的な敗因、言い換えればイングランドにとっての勝因を、イングランドのエディー・ジョーンズHCはこのように語っている。

「(ディフェンスの時に)ラインから力強く飛び出さないといけない、時間やスペースを奪わないといけないと分かっていたし、それを実行できた。ワールドカップはいつもディフェンスが鍵で、我々にとっては防御こそ最大の攻撃だ。我々はディフェンスでチャンスを作って攻撃した」

 先にも挙げたイングランドの前に出るディフェンス、これこそがオールブラックスの大きな敗因となった。フェーズを重ねると同時にディフェンスが一気に前に出て、オールブラックスの次の一手とスペースを埋める。これがてきめんに効いた。
 
 隙がないと見られていたオールブラックスは、唯一と言っていい隙を突かれたと言っていいだろう。ただ、3位決定戦でウェールズに快勝した今、イングランド以外のチームがオールブラックスを攻略できなかったのもまた事実だ。弱体化という指摘は酷だろう。

 時間をかけてオールブラックスの弱点を研究し対策を練ってきたイングランドが、すべてにおいて上回っていた。それが今回のオールブラックスのシンプルな敗因と結論付けたい。

 今大会を最後に、キャプテンを務めたNO8キアラン・リードをはじめFLマット・トッド、CTBライアン・クロッティ、WTB/FBベン・スミスらがオールブラックスのジャージを脱ぐ。偉大な選手たちが退き、指揮官も交代することでまたひとつの時代が終わり、来年からまた新たなスタートラインに立つこととなる。

 それでも脈々と受け継がれてきた選手やコーチの育成サイクル、その他勝利に必要なあらゆる要素を熟知している彼らが、引き続き世界のラグビーシーンをリードしていく未来は揺るがない。まず4年後の捲土重来に期待したいところだ。

取材・文●齋藤龍太郎(楕円銀河)

【PHOTO】オールブラックスが前回王者のプライドで3位を死守!盛り上げたサポーターたちも熱かった!

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号