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食と体調管理

日本バスケ界のレジェンド「折茂武彦」が語る、現役生活27シーズンを過ごせた裏にある食への意識変化と、自身のバスケットボールストーリー

鳴神富一

2022.09.01

写真提供:©LEVANGA HOKKAIDO(写真は2019-20シーズン現役時に撮影)

写真提供:©LEVANGA HOKKAIDO(写真は2019-20シーズン現役時に撮影)

――長らくトヨタ自動車に在籍している中で、36歳の時に2006年の日本開催の世界選手権で代表復帰。そして、北海道という新たな地での挑戦。きっかけは何だったのでしょうか。

 36歳の間に何度も日本一を経験して、常勝チームへ押し上げる事ができた中で、自分の中でやり遂げた感がありました。加えて強くなれば、優秀な選手たちも集まってくる中で、ベンチスタートかつ出場時間も半分くらいになってきました。

 30歳を越えた辺りから当時の「引退」の二文字も出てきて、自分の必要価値も薄れてきた。メンタル的にもダウンしてしまっていた時期だったんですよね。

 その中で日本開催の世界選手権があって、当時のジェリコ・パブリセヴィッチ日本代表ヘッドコーチから「代表に来てくれ」と毎日電話が掛かってきて、熱心に誘われたんです。でも、自分は一度代表引退を宣言したし、今の状況だと力を貸す事は難しいという旨を伝えました。それでも熱心に誘ってくれる。

 自信を失っていた時期でしたけど、代表復帰できるならと最終的には誘いを受ける事にしました。「練習も特別メニューだから大丈夫だよ」と言われて合宿に参加しました。でも、他の選手と全く同じ練習メニュー。練習後にジェリコからは「お前ならできると思っていたんだよ」と褒めちぎられましたが、2度とあんな練習したく無いくらいに厳しい練習でした(笑)

 そこから世界選手権にてスタートで出場して、毎試合2桁得点を挙げる事ができた。「まだ、自分できるじゃん」と感じて、自信を取り戻せた感覚になりました。

 その時期に北海道のチームから誘いを受けたんですよね。最初はすごく抵抗がありました。とにかく寒いのが嫌だったのが理由です(笑)でも、プロチームというものに魅力を感じたんです。自分の今まで経験してきたものと違う景色が見られるんじゃないかと考えました。

 日本代表に復帰して、必要とされたから気持ちも入ったし、頑張る事ができた。北海道が本当に必要としてくれているのであれば、現時点に拘る必要はないと思いました。

 でも、もう周囲は移籍に関しては大反対ですからね。安定を捨ててまでプロチームで苦労する事はないし、何を以って北海道に行くのかという事を言われました。それでも自分自身の人生は自分で決めるものだから、押し切って北海道に向かいましたね。
 

写真提供:©LEVANGA HOKKAIDO 

■北海道での挑戦で味わった新たな価値観

――北海道に移籍してプロの世界の現実に直面し、チームの危機的状況を救って新たなチームとしてご自身が代表にもなるという経験もしています。そのような人生になると思っていましたか。

 全く思っていなかったですし、想像もしていなかったです。

 これまでも人生の中で色々な失敗があって苦しい時もありましたけど、自分の中では上向き調子でしたが、それが一気に降下する感じでした。その落差に驚いたというか、結構衝撃的でしたね。

 トヨタにいた時代は環境も含めてバスケに集中できるパーフェクトなチームだった中で、何もないところに来て、全く違う事も経験しました。街頭でのビラ配り、イベント出演、テレビやラジオへのメディア露出など、当初は何の意味があるのかなと思ったわけです。

「自分はバスケをするために来ているのに、なんで余計な事までやるんだろう」と。そういう中で生活していると、コンビニ行っても、街を歩いていても、さまざまな場面で色々な人に声を掛けられる。北海道に来るまでは全くそんな事はなかった。

「プロ選手の価値はプレーをするだけではダメなんだ。やはり知ってもらって価値がある」と、その時に気づいたんです。自分たちに価値を感じてくれるからチケットを買ってアリーナで応援してくれるし、色々な事が生まれる。辛い事もありましたけど、良い経験になりました。環境面でも衝撃でしたね、練習は廃校の体育館を利用して、合宿は道内でもバスで6時間かかる場所に行きました。

 それでもプレーヤーとしてというよりも、北海道に来て本当に人間的に成長できたと感謝しています。勝つためだけにプレーしていた過去から、誰かの為にプレーする、応援してくれている人達のために頑張らないといけないと考え方が変わりました。
 

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