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フィギュア

「プロローグは自分の半生」羽生結弦が吐露した“3.11”への想い。来年の東京ドーム公演は「絵本のような物語」

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2022.12.06

羽生は故郷である東北で開催したアイスショーに特別な思いを込めていた。写真:田中研治(The Digest写真部)

羽生は故郷である東北で開催したアイスショーに特別な思いを込めていた。写真:田中研治(The Digest写真部)

 宮城県仙台市出身の羽生にとって、“3.11”は切っても切り離せない出来事だ。先の見えない暗闇のなか、「スケートを続けてもいいのだろうか」と当時16歳の彼は感じていたが、周囲はスケートを提供する場所をできる範囲で提供してくれた。

 その恩義を、羽生は今でも大事にしており、「そういう地で作って頂けたプログラムを、またこの地でできたことはすごく自分にとっても感慨深いものがありました。実際に震災があって、すぐに作ったプログラムたちだったので」と、この公演で『悲愴』、『ロミオ+ジュリエット』を演じた特別な理由を振り返る。

「月日がどれだけ経ったのかということと、また改めて自分自身もこのプログラムに触れることによって、皆さんに触れてもらうことによって、少しでも震災を思い出したり、思い出して苦しんで頂くのはちょっと申し訳ないなと思いつつも、でも、それがあるからこそ、今があるんだって思って頂けるようにしました」

 羽生は遠くを見つめて言葉を選びながら、「少しでも何か、自分の演技を見て消化したり、逆にそれを思い出して悼んだり。それが良いことなのか悪いことなのかはちょっと分からないですけど、少しでも何かしらの気持ちが灯るきっかけとしての演技をしたいなと思いました」と、“故郷”である東北へ想いが存分に詰まったプログラムたちを滑った。
 
 最終公演の最後には、ファンへサプライズ発表があった。2023年2月26日に、東京ドームで一夜限りのアイスショーを開催。もちろん、今回も単独だ。「初めてスケーターとして東京ドームでの公演ということで、正直すごい緊張しています。(東京ドームも)一人でやるつもりです」と羽生は語る。タイトルは、『GIFT』。羽生が紡ぐ物語の新章は、ファンへの恩返しとなる「贈り物」を意味する。

「自分の物語は、恩返しから始まるかなと思って。贈り物として『GIFT』というタイトルを付けました。物語自体が皆さんへの贈り物になってほしいですし、またその物語に含まれている自分のプログラムたちが、皆さんへのギフトになればと思います」

『プロローグ』は氷上にプロジェクションマッピングを投影し、幻想的な画を表現した。『GIFT』では、一体どんな構成になるのだろうか。

「普通のアイスショーとはまた違って、物語が主体としてあって。その中に僕のプログラムたちが、いろんな意味をもって存在している絵本のような物語。そんな感覚で見て頂けるスケートになっていると思うので、ぜひ期待していただければと思います。『GIFT』に込めた思いは、今までアマチュア時代をやっていくにあたって、いろんな支え方を皆さんにして頂けたと思っているので。そういう方々への恩返しです」

 稀代のスケーターは、これからも誰も踏み入れたことのない領域へチャレンジを続ける。

取材・文●湯川 泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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