こればかりはやってみなければわからない。しかし、個人的にはスーパーバンタム級では井上のパンチの効果は増す可能性すらあると考えている。昇級後にパンチの効き目を保つのは難しいと思うかもしれないが、スーパーミドル級に上げてからのサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)のように、厳しい体重調整からの解放がプラスに働くケースは、ボクシング界においてはしばしば見受けられる。
井上に関しても、これまでスーパーフライ級、バンタム級と階級を上げていくたびに、より支配的な強さを見せてきた。ゆえに今回も厳しい減量が緩和されれば、一段上のパンチ力が解き放たれても不思議はない。この“効果”の行方は非常に楽しみな要素であり、スーパーバンタム級に上げた直後の数戦での最大の注目ポイントになるだろう。
最後になるが、筆者は前述通り、井上のパワーはスーパーバンタム級でも同等の威力を発揮すると見ている。だが、一方で、誤解を恐れずに言えば、効果が落ちた方が今後の戦いはより興味深くなるかもしれないとも考えている。なぜなら、これも昨夏に井上自身がこう語り残していたからである。
「今まではパンチを当てていくごとに相手の表情が変わっていたんですけど、スーパーバンタム級、フェザー級と上げたときに、バンタム級なら普通に倒していたパンチでも耐えられてしまうかもしれません。そうなったときのメンタルの保ち方。それは楽しみだなとも思うし、怖さでもあります。そこで自分のすべてが見せられるのかもしれません」
これまでまだ見せてきていなかった“モンスターのすべて”とはどういう意味なのだろう? パワーパンチで相手の表情が変わらなかった時に、どれだけの引き出し、どんな奥行きの深さを見せてくれるのか。これまで私たちが見てきた「井上尚弥」はまだ完成形ではなかったのかもしれない。
そんなスリリングな疑問と期待感も抱きながら、日本ボクシング界が産んだ最高傑作のスーパーバンタム級での初陣を待ちたいところだ。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
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井上に関しても、これまでスーパーフライ級、バンタム級と階級を上げていくたびに、より支配的な強さを見せてきた。ゆえに今回も厳しい減量が緩和されれば、一段上のパンチ力が解き放たれても不思議はない。この“効果”の行方は非常に楽しみな要素であり、スーパーバンタム級に上げた直後の数戦での最大の注目ポイントになるだろう。
最後になるが、筆者は前述通り、井上のパワーはスーパーバンタム級でも同等の威力を発揮すると見ている。だが、一方で、誤解を恐れずに言えば、効果が落ちた方が今後の戦いはより興味深くなるかもしれないとも考えている。なぜなら、これも昨夏に井上自身がこう語り残していたからである。
「今まではパンチを当てていくごとに相手の表情が変わっていたんですけど、スーパーバンタム級、フェザー級と上げたときに、バンタム級なら普通に倒していたパンチでも耐えられてしまうかもしれません。そうなったときのメンタルの保ち方。それは楽しみだなとも思うし、怖さでもあります。そこで自分のすべてが見せられるのかもしれません」
これまでまだ見せてきていなかった“モンスターのすべて”とはどういう意味なのだろう? パワーパンチで相手の表情が変わらなかった時に、どれだけの引き出し、どんな奥行きの深さを見せてくれるのか。これまで私たちが見てきた「井上尚弥」はまだ完成形ではなかったのかもしれない。
そんなスリリングな疑問と期待感も抱きながら、日本ボクシング界が産んだ最高傑作のスーパーバンタム級での初陣を待ちたいところだ。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
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