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格闘技・プロレス

「本当に最終章じゃないですか」――慎重だった階級上げへの葛藤。井上尚弥が“地位崩壊”のリスクがあっても挑むワケ

THE DIGEST編集部

2023.01.14

バンタム級を完全に制した井上。だからこそ、そこに留まるという選択肢もあったが、彼は次に進む決意を新たにした。写真:鈴木颯太朗

バンタム級を完全に制した井上。だからこそ、そこに留まるという選択肢もあったが、彼は次に進む決意を新たにした。写真:鈴木颯太朗

「もうひとつ階級を上げるのは慎重にならないといけない。『敵がいないから上げろ』ってみんな言いますけど、階級をひとつ上げるのはそう簡単なものじゃない」
【PHOTO】ボクシング・井上尚弥が記者会見を実施!4団体王座返上・スーパーバンタム級転向を発表!

 これは約2年前の年の瀬に井上尚弥(大橋)が階級上げについて語った言葉だ。当時、アラン・ディパエン(タイ)とのWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチを終えたモンスターには、「近いうちに1階級アップさせるのではないか」という噂が流れていた。だが彼は、世界6階級制覇王者マニー・パッキャオ(フィリピン)を「稀」として、階級上げが容易ではないという持論を口にしたのである

 そこから時が経ち、井上は慎重になっていた階級に進む。

 昨年6月にノニト・ドネア(フィリピン)との3団体統一戦を制すと、同年12月にはポール・バトラー(英国)を撃破。日本人はもちろんのこと、アジア人としても初の4団体統一王者となった井上は、1月13日にバンタム級の全ベルトの返上を決断。そのうえでスーパーバンタム級へのステップアップも正式に発表した。
 
 数多の猛者と繰り広げた激闘を経て、己が「適正」と語るバンタム級には文字通り敵はいなくなった。それによって階級上げをするのは「バンタム級ではやり残したことはなく、戦いたい相手もいない」と本人が話す通り、もはや必然ではあった。

 もっとも、「慎重さ」という点において変わりはない。さしものチャンプも、すべての根幹を成すパワーの違いを埋めるための筋力アップが求められ、トレーニング方法の変化も伴う1.8キロも増す階級での試合には「楽だとは思っていない」と危機感がある。

 現時点でスーパーバンタム級の王座に君臨するのはスティーブン・フルトン(米国/WBC、WBO同級王者)とムラドジャン・アフマダリエフ(ウズベキスタン/WBAスーパー、IBF王者)。世界屈指のトップランカーである彼らとの試合が仮にすぐさま実現しても、井上が今までのように圧倒的、あるいは一方的な試合に持ち込むのようは難しいかもしれない。

 実際、階級上げによって苦戦を強いられているファイターは少なくない。階級の違いはあるが、ニカラグアの英雄ローマン・ゴンサレスは、加齢による運動量の低下はあるが、フライ級からスーパーフライ級に上げ、コンディション調整に手を焼いている感が否めない。
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