ところが、入れ替え戦2週間前の監督交代が、最悪の結果を招いてしまった。
「非常にリスクはありましたが、負けるメンバーではないので、よもや、負けるとは想定しませんでした」
相手チームには大変失礼だが、Vリーグチーム関係者も含めて、負けることがないと思われた入れ替え戦。2戦目は25-18、25-12、25-18と1セットも奪えない惨敗だった。
終わってみなければ何が起こるのか分からないのが、勝負の世界。ただ、2週間でコーチが立て直せるほど甘くはなかった。
入れ替え戦直前の監督交代を決断したのは、社外4人を含む9人で構成される取締役会。うち2人は今年1月から就任したBリーグ社長経験者と県内の市議。社内取締役5人のうち、バレーを知っているのは「日本バレーボール協会元会長で、大学でバレー経験のある中野泰三郎会長だけ」(橋本社長)だ。
結果論ではあるが、安保監督を入れ替え戦後に退任させれば降格は免れたかもしれない。橋本社長も「我々、役員の運営が適切ではなかった」と認める。
ただ、Vリーグチーム関係者には、今回のヴィクトリーナ姫路の判断に理解を示す声もある。
「選手は、指導に疑問を持つなどすれば、どんどん監督から心が離れていってしまいます。例えば『この監督なら入れ替え戦に出場したくない』という選手が多くいれば、今の時代、会社は監督より選手を優先します。入れ替え戦直前の監督交代もやむを得ない場合がありますね」とVリーグチームの運営にも携わったことのある監督経験者はいう。
また、「前年に総得点でリーグ3位のプラク・セレステ選手が今季は15位。得点で220点以上も少なく、中心選手の不振は大きなマイナスでした。選手獲得も十分に出来ているとはいえません」と安保前監督に同情的な声も。
一方でVリーグチーム関係者が首をかしげるのが、現場へのサポート体制だ。
安保前監督はGMから就任したが、GM職は空席のままでシーズンに臨み、橋本社長が兼務する形で「チームディレクター」が新設されたのは今年1月のこと。現場への介入を控えていたのかもしれないが、現場に適切な助言や指示が行われていれば、チームの〝迷走〟も防げていたことだろう。
「育成か、勝利かが定まらず、その軌道修正が出来ていなかった経営責任を感じる」と橋本社長。
契約はまだ済ませていないが新監督に決まったセリンジャー氏は、Vリーグやオランダ代表監督を務めた実績のある指導者。
招へいした経緯を橋本社長は、チームを一緒に立ち上げた眞鍋政義さん(日本代表女子監督)の名前を挙げ「ファンやスポンサーの期待に応えるためには、眞鍋をイメージした監督がどうしても必要だった。選手の個性を生かし勝てるチーム作りなどが出来る方は国内にはいなかった」と説明した。
「全責任は私にある」と社長職を5月末で退くことを表明した橋本社長は、これからスポンサーなど支援者にお詫び行脚をするという。
約6億円といわれるスポンサーの支援が頼りのプロチーム。「謝罪会見」が謝罪だけに終わらず、次期監督も発表することでチーム刷新を外部に大きく打ち出す必要がそこにはあった。
球団として組織的な強化を怠り、現場を十分にサポートしなかったツケを監督に負わせて辞めさせたようにもみえる今回の迷走劇。
Vリーグでは24/25シーズンから、世界を目指すチームが集まる新しいリーグ、SVリーグが始まる。参加要件が違うため、V2降格がSV加盟に大きな影響を与えるものではないと思われるが、スポンサー集めやイベントの企画だけなく、チーム強化でもプロであるべきだろう。
取材・文●北野正樹(きたの・まさき)
【著者プロフィール】
2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。関西運動記者クラブ会友。
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「非常にリスクはありましたが、負けるメンバーではないので、よもや、負けるとは想定しませんでした」
相手チームには大変失礼だが、Vリーグチーム関係者も含めて、負けることがないと思われた入れ替え戦。2戦目は25-18、25-12、25-18と1セットも奪えない惨敗だった。
終わってみなければ何が起こるのか分からないのが、勝負の世界。ただ、2週間でコーチが立て直せるほど甘くはなかった。
入れ替え戦直前の監督交代を決断したのは、社外4人を含む9人で構成される取締役会。うち2人は今年1月から就任したBリーグ社長経験者と県内の市議。社内取締役5人のうち、バレーを知っているのは「日本バレーボール協会元会長で、大学でバレー経験のある中野泰三郎会長だけ」(橋本社長)だ。
結果論ではあるが、安保監督を入れ替え戦後に退任させれば降格は免れたかもしれない。橋本社長も「我々、役員の運営が適切ではなかった」と認める。
ただ、Vリーグチーム関係者には、今回のヴィクトリーナ姫路の判断に理解を示す声もある。
「選手は、指導に疑問を持つなどすれば、どんどん監督から心が離れていってしまいます。例えば『この監督なら入れ替え戦に出場したくない』という選手が多くいれば、今の時代、会社は監督より選手を優先します。入れ替え戦直前の監督交代もやむを得ない場合がありますね」とVリーグチームの運営にも携わったことのある監督経験者はいう。
また、「前年に総得点でリーグ3位のプラク・セレステ選手が今季は15位。得点で220点以上も少なく、中心選手の不振は大きなマイナスでした。選手獲得も十分に出来ているとはいえません」と安保前監督に同情的な声も。
一方でVリーグチーム関係者が首をかしげるのが、現場へのサポート体制だ。
安保前監督はGMから就任したが、GM職は空席のままでシーズンに臨み、橋本社長が兼務する形で「チームディレクター」が新設されたのは今年1月のこと。現場への介入を控えていたのかもしれないが、現場に適切な助言や指示が行われていれば、チームの〝迷走〟も防げていたことだろう。
「育成か、勝利かが定まらず、その軌道修正が出来ていなかった経営責任を感じる」と橋本社長。
契約はまだ済ませていないが新監督に決まったセリンジャー氏は、Vリーグやオランダ代表監督を務めた実績のある指導者。
招へいした経緯を橋本社長は、チームを一緒に立ち上げた眞鍋政義さん(日本代表女子監督)の名前を挙げ「ファンやスポンサーの期待に応えるためには、眞鍋をイメージした監督がどうしても必要だった。選手の個性を生かし勝てるチーム作りなどが出来る方は国内にはいなかった」と説明した。
「全責任は私にある」と社長職を5月末で退くことを表明した橋本社長は、これからスポンサーなど支援者にお詫び行脚をするという。
約6億円といわれるスポンサーの支援が頼りのプロチーム。「謝罪会見」が謝罪だけに終わらず、次期監督も発表することでチーム刷新を外部に大きく打ち出す必要がそこにはあった。
球団として組織的な強化を怠り、現場を十分にサポートしなかったツケを監督に負わせて辞めさせたようにもみえる今回の迷走劇。
Vリーグでは24/25シーズンから、世界を目指すチームが集まる新しいリーグ、SVリーグが始まる。参加要件が違うため、V2降格がSV加盟に大きな影響を与えるものではないと思われるが、スポンサー集めやイベントの企画だけなく、チーム強化でもプロであるべきだろう。
取材・文●北野正樹(きたの・まさき)
【著者プロフィール】
2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。関西運動記者クラブ会友。
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