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バレーボール

世界へ挑むべく女子バレー眞鍋監督が欲した頼りになる男、“団長”の仕事ぶりとは?「五輪に向けた戦いはコートの上だけではありません」

北野正樹

2023.06.13

火の鳥NIPPONを率いる眞鍋監督。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

火の鳥NIPPONを率いる眞鍋監督。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

 多岐にわたる団長の仕事で、最も大切なのは選手ファーストの精神だ。VNL予選ラウンド第2週が開かれるブラジル協会には、空港への到着時間やバスの迎えなどをメールで手配。乗り継ぎの関係で現地到着は日本時間で8日早朝と約6時間遅れたが、選手やスタッフがすぐにホテルで休養できるように交渉するのが、ブラジルでの初仕事になった。

「以前はファックスを送って、不具合があれば現地で改善してもらっていましたが、今はメールですね。シニアは事前に細かい要望もできますが、ユースやジュニアなどアンダーカテゴリーはそこまで細かくは対応してくれませんので、今でも現地で調整することが多いですね」と井上さん。ホテルでの食事を改善してもらうほか、時間に比較的ルーズな国も多いため日本チームの意向を伝えて協力を仰ぐ。
 
「政治の世界ではありませんが、いうなればロビイストですね。現地で予定表を渡され、これはアカンやろというのを、一つずつ交渉して解決していきます。言葉は悪いのですが、向こうの言いなりになっていたら、チームが戦いにくくなってしまいますからね」

「日本と同じくらいのおもてなしを向こうの国がしてくれるよう、交渉をしながら選手がより良い環境で練習や試合が出来るように、言うことを聞いてもらいます。与えられた状況に我慢はしませんし、迎合もしません。戦う日本人、ノーと言う日本人なんです(笑)」

 声を上げなければ、改善はしない。開催国の関係者に嫌われても、チームのために主張は曲げない。意見を言うことでコミュニケーションが生まれ、逆に関係者と親しくなっていくのだという。

 井上さんの仕事ぶりについて、北京五輪でスタッフとして一緒に働いた渡辺圭太郎・現日本バレーボール協会(JVA)国内業務部部長は「日本チームが練習も含めて活動しやすいように、状況に応じて臨機応変に動いていだだけました」と振り返る。

 ユースで遠征をともにした小野寺は「バレーを始めて日が浅く海外遠征も初めてでしたが、選手がプレーに集中しやすいようにサポートしていただき、すごく思い出深い遠征になりました。気軽に声を掛けてリラックスさせてくださったり、僕らが試合に専念できるよう裏で動いて生活面から支えていただいたりしているのは見ていてわかりました」

 高橋も「バレーにすごく熱い方で、いろいろ教わりました。マネジメント能力はあるし、コミュニケーション能力も高く、食事の面などでも助けていただきました」とジュニア時代の思い出を語る。

 4年前から朝日大学と姉妹校の明海大学(千葉県浦安市)女子バレー部でコーチ、スカウトを務め国内の大学、高校関係者の知人も増えたが、海外の女子関係者とはルートがない。

 それでも団長に就任したのは、旧知の眞鍋政義・日本代表女子監督の要請を受けたから。

 眞鍋監督が28年ぶりのメダル獲得に導いた2012年ロンドン五輪の前後には、モントリオール五輪金メダリストの荒木田裕子さんが女子代表の団長を務めていたが、その後は実質的な団長は不在だった。眞鍋監督は「チームをコーディネートしてくれる人が欲しかった。井上さんは男子で団長の経験が豊富で適任者。すでにチームのためにいろいろ働いてくださっています」と感謝する。
 
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