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【名馬列伝】“白い稲妻”の如く怒涛の連勝街道で頂点を掴んだタマモクロス。1歳違いの「芦毛の怪物」と運命の交錯へ<前編>

三好達彦

2023.08.01

 まさに昇竜の勢いで勝ち進むタマモクロスは、いよいよ頂へと挑戦する。天皇賞・春(GⅠ、京都・芝3200m)に単勝1番人気で出走すると、馬群の後ろ目で折り合ってレースを進め、2周目の第3コーナー付近から徐々に進出して5番手で直線へ向くと、前で粘る菊花賞馬メジロデュレンらを内から一気に差し切り、2着のランニングフリーに3馬身もの差を付けて優勝。6連勝でついにGⅠホースの称号を手に入れた。下級条件のときから手綱を取り続けていた南井克巳にとっても初のGⅠ制覇となった。

 続く宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)でも、先に抜け出したGⅠレース3勝のニッポーテイオーを難なく差し切り、2馬身半差で優勝。7連勝で事実上の頂点に立った。

 一方で大きな注目を集めていたのが、笠松競馬から中央への転入後、ペガサスステークス、毎日杯、京都4歳特別(以上すべてGⅢ)、ニュージーランドトロフィー4歳ステークス(GⅡ)と、負け知らずの重賞4連勝を遂げたオグリキャップだった。
 
 クラシック競走に出走するには、早い時期から「3歳馬5大特別競走登録」という手続きが必要だ。そのため、現在は認められている「追加登録」という制度ができるまで(1992年)、この登録をしていなかったオグリキャップは皐月賞、日本ダービーへの出走が叶わず、秋の菊花賞にも参戦できないこととなっていた。毎日杯で、のちに皐月賞馬となるヤエノムテキを置き去りにして優勝を遂げたにもかかわらず、である。

 3歳限定のトライアル重賞を使う手はあったが、「古馬とも互角に戦える」と信じた陣営は勇敢にも秋シーズンは古馬のGⅠへ向かうことを決め、その値踏みをする意図もあって7月の高松宮杯(GⅡ、中京・芝2000m)に参戦。すると、ここでは逃げた古豪のランドヒリュウを楽勝に差し切って1馬身1/4差を付けて快勝を飾り、陣営の読みが正しかったことを証明する。

 そして、約3か月の休養をはさんで臨んだのは天皇賞・秋(GⅠ、東京・芝2000m)の前哨戦となる毎日王冠(GⅡ、東京・芝1800m)。「スーパーGⅡ」と呼ばれるだけあって、ダービー馬のシリウスシンボリ、前年の安田記念を制したフレッシュボイスなど、古馬のトップクラスが顔を揃えた。

 しかし、単勝オッズ1.7倍の1番人気という圧倒的な支持を受けたオグリキャップは、第一線の古馬たちも軽く一蹴。直線に向いてほぼ同じ位置から追い出したシリウスシンボリに1馬身1/4の差を付けて完勝し、こちらも中央入りしてから重賞ばかりを6連勝(地方時代から数えれば14連勝)という快挙を成し遂げたこともあって、ファンの人気は日を追うごとに加熱していくばかりだった。<後編に続く>

文●三好達彦

【動画】怒涛の6連勝で頂点に上りつめたタマモクロスの天皇賞(春)

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