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【名馬列伝】競馬の枠を超えたディープインパクトの衝撃。その「成功」はまさに唯一無二

三好達彦

2021.07.22

ディープインパクトは現役時代の活躍はもちろん、引退後も種牡馬として極めて優秀な仔を生みだした。写真:産経新聞社

ディープインパクトは現役時代の活躍はもちろん、引退後も種牡馬として極めて優秀な仔を生みだした。写真:産経新聞社

 日本の競馬史上において、競馬ファンの枠を越え、国民的な知名度を獲得した競走馬は3頭いると考えている。

 1頭目は、地方の大井競馬でデビューし、中央移籍後も連戦連勝で話題が沸騰し、少年マンガ誌の表紙、グラビアを飾るまでになったハイセイコー(1970年生)。

 2頭目は、これも地方競馬の笠松から中央へ転入して連勝を重ね、のちにはラストランの有馬記念で伝説的な復活劇を見せたオグリキャップ(1985年生)。

 そして3頭目は、史上2頭目となる無敗でのクラシック三冠制覇を達成し、名手・武豊をして「飛んでいるような走り」と言わしめたディープインパクト(2002年生)である。

 偶然にも十数年の間隔をおいて出現したこの名馬たちだが、その人気の上昇ぶりにはかなりの違いがある。

 ハイセイコーが高度経済成長期を、またオグリキャップがバブル景気に影響を受けた”競馬ブーム”を背景としたものに対して、ディープインパクトが現役生活を送った2004~2006年にはバブルはすでに弾け飛んだ後のことだった。

 また、ハイセイコーとオグリキャップが幾度もの敗戦がファン心理を加熱させるジャンピングボードになったのに対し、ディープインパクトは国内での敗戦は3歳時の有馬記念(2着)の一度のみという圧倒的な戦績を残している。
 
 では、なぜディープインパクトが国民的な注目を浴びたのか。

 それはひたすらに、彼の驚異的な「強さ」と「速さ」、また「走りの美しさ」によるものだったと断じて疑いない。

 この点が、ディープインパクトが博した人気の特異さであり、同時に凄さである。

 日本競馬の血統地図を塗り替えた大種牡馬サンデーサイレンス。その産駒は世界中の競馬関係者から声がかかるほどの人気を博し、セリ市に出てきた牡馬ならば”ミリオン・ホース”(落札額が1億円を超える馬)になるのが当たり前であった。

 当歳(0歳)の7月、日本最大のセリ市であるセレクトセールに上場された「ウインドインハーヘアの2002」、のちのディープインパクトは、サンデーサイレンスの仔でありながら、馬体の小ささもあってか億には遠く届かず、7000万円(税別)で金子真人氏(現・金子真人ホールディングス株式会社)によって落札された。
 

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