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「何度もパニック発作に襲われた」東京五輪で大騒動となった“亡命事件”の女子陸上選手がポーランド代表として世界陸上へ! 壮絶なる2年間の苦悩を明かした

THE DIGEST編集部

2023.08.09

ポーランド国内での大会で実績を積む。8月19日に開幕する世界陸上へのエントリーなるか!? (C)Getty Images

ポーランド国内での大会で実績を積む。8月19日に開幕する世界陸上へのエントリーなるか!? (C)Getty Images

 あれからちょうど2年が経過した。

 ツィマノウスカヤは2022年6月にポーランドの市民権を取得。だが、国際舞台への復帰には大きなハードルが立ちふさがっていた。世界陸連が国籍を変更する選手に対して、3年間の待機期間を設定しているためだ。ツィマノウスカヤは2024年のパリ五輪出場を目ざしているが、国籍を変えても世界陸連の認可が下りなければ、エントリーは叶わない。

 それが現地8月6日、急転直下の展開をみせる。世界陸連が特例措置としてツィマノウスカヤのポーランド代表としての活動を認可。今月19日にハンガリーのブダペストで開幕する世界陸上に関しても、本人がSNSで「参加できるかもしれない」と言及したのだ。もっとも得意とするのは200メートルだが、100メートルやリレーでのエントリーも考えられるだろう。

 そんななか、『The Guardian』紙がワルシャワで生活するツィマノウスカヤを直撃した。26歳のスプリンターは東京での出来事を振り返り、「本当に昨日のことのように思い出されるけど、当初は忘れたくてしょうがなかった。無理だと分かっているのにね」と話してうつむいた。ポーランドに居を構えてほどなくトレーニングを開始したが、「ある日突然、パニック発作を起こしたの。それが何度も続くようになって、心理カウンセラーの助けを借りなければいけないほどだった。クレイジーな毎日だったわ」と壮絶な日々を明かしている。
 
 さらに、「正直言って、モチベーションの問題もあった。東京のあと、私にはスポーツのキャリアを続けるモチベーションがなかった」とも。常に寄り添ったのは夫であるアルセニイ・ズダネビッチ氏で、ポーランドで彼女を支える新たな友人や仲間たちだった。資金面ではポーランド陸上協会が最大限の援助をしてくれたようだ。

 個人事業主となってフィジカルトレーナーの仕事もはじめ、現在は13人の顧客がいるという。そのなかで気持ちを奮い立たせ、「走りに関する自分のテクニックやフィジカルだけじゃなく、生活のスタイルや食事に至るまですべてを一変させた。とても充実した2年間にすることができたと思う」と胸を張る。

 しかし現在も、ベラルーシにいる家族とは再会を果たせていない。「お互いに国外で旅行と称して会おうと試みたけど、私の存在があるかぎり、家族にとってはリスクでしかなかった。電話やビデオ通話はできているけど、もう2年半も対面していない。次に会えるのがいつになるかは分からないわ」と悲しげに想いを馳せた。
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