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ゴルフ

渋野日向子が愛される理由――逆境に負けない強靭なメンタルと”笑顔”のルーツを探る

山西英希

2019.12.14

窮地に立たされても気落ちすることなく強気で攻める渋野は、今年のバウンスバック率で1位となった。(C)Getty Images

窮地に立たされても気落ちすることなく強気で攻める渋野は、今年のバウンスバック率で1位となった。(C)Getty Images

 さらに、アスリートだった両親からは、ゴルフに臨む際の心構えや身体の調整方法についても学べたことも大きい。例えば、伸子さんからは、「ダブルボギーを叩いても腐ることなく、笑顔でプレーしていれば、見ている人も気持ちいいよ」というアドバイスを受けた。その教えどおり、渋野はミスをしてもすぐに切り替えて笑顔を見せるようになった。『笑う門には福来る』ではないが、笑顔を見せることで気分的にも平常心を取り戻し、たとえミスをしても目の前にあるボールに集中することができた。それがあってのバウンスバック率1位ではないのか。

 プレーを見る方にとっては、たとえボギーを叩いてもすぐに正確無比なアイアンショットや思い切りのいいパッティングによってバーディーを奪い返す渋野の姿は、かなり魅力的に映ったはずだ。しかも、 “スマイリング・シンデレラ”と呼ばれる笑顔を見せられるわけだから、老若男女を問わず幅広い層から愛されても不思議ではない。

 実際、ラウンド中に小さい子どもを見つけるとボールを渡しにいく姿や、テレビカメラが歩いている自分を撮影していることに気がつくと笑顔を振りまく渋野を見ることで、癒された人も多いだろう。
 
 2020年も国内女子ツアーは渋野がいろんな意味で主役となるが、今年以上に期待度と注目度は高くなる。それこそ一挙手一投足まで注目を浴びると思う。それでも渋野はしっかりと結果を残すのではないだろうか。今季の最終戦を終えたとき、渋野は次のよう語っていた。

「家族、応援団の人、コーチ、マネージャーさん、バッグを担いでくれたキャディさん、スポンサーさんもそう、地元で応援してくれている人もそう。本当にその方たちの支えがなければ、この1年間、全英以降も絶対にやってこれなかった。皆さんに感謝の気持ちで一杯です」

 自分はけっして一人で戦っているわけではない。これだけ多くの人が支えてくれている。その人たちへの感謝を表すためにも頑張ろうと思える人間は強い。まさに、渋野にはそう思えるだけの支えがある。だからこそ、実質プロ1年目のルーキーでもこれほどまでの結果を残すことができた。

 ただ、海外メジャーであるAIG全英女子オープンに優勝したものの、本人的にはまだまだ技術的な課題があるという。確かに、距離が長く、芝や形状に特徴のある米国のゴルフ場にどこまで対応できるかも未知数だ。おそらく、どう打てばいいのかわからない局面も出てくるだろう。しかし、周囲に対する感謝の気持ちを失わない限り、渋野は今以上に努力を続けることができるし、さらに強くなる気がしてならない。

文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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